要望書・見解等

2015年度


標題 認知症徘徊列車事故訴訟・最高裁判所判決への見解
日付 2016年3月15日
発信者 社会福祉専門職団体協議会(特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本民夫、公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉克英、公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠)
ソーシャルワーク教育団体連絡協議会(一般社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川匡俊、一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東秀幸、一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 二木立)

■最高裁判所判決の概要

 駅構内の線路に立ち入り列車と衝突して死亡した認知症の男性の遺族に対し、JR東海が約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、本年3月1日、最高裁判所は「家族に賠償責任はない」との判断を示し、JR東海の上告を棄却した。この裁判は責任能力のない人が第三者に与えた損害は、「監督義務者が負う」とする民法の規定をめぐり、家族が監督義務者にあたるかが争点であった。最高裁判所は、認知症の人を容易に監督できる場合は、家族が賠償責任を負うことがあると指摘する一方で、今回の判決は、妻や長男が「監督可能な状況だったとは認められない」としてJR東海側の請求を退けた。

 
■ソーシャルワーカー団体及びソーシャルワーク教育団体としての見解

 医療や福祉・介護の現場で認知症の人や家族と深く関わり、地域で安心して暮らしていくことを支援しているソーシャルワーカー団体及びソーシャルワーク教育団体として、私たちは、この裁判が今後のわが国の認知症ケアや家族介護に大きな影響を与えるものとの危機感を抱き、意見を表明してきた。徘徊のある認知症の人を家族が介護することの厳しい現実の中で、家族が「家族である」というだけで責任を問われることになれば、在宅介護、地域ケアのハードルをさらに上げてしまうことになったであろう。最高裁判所判決は、その現実を踏まえた妥当な判断であったと評価できよう。

 一方で、今回の判決は、監督義務者に準じる立場の具体的な基準を示し、介護を担う人の年齢や能力、生活状況によっては賠償責任が認められる余地を残しており、個々の事例ごとに解釈や判断が委ねられる形となった。

 賠償請求を棄却した根拠として、妻が高齢であること、息子が別居していること等が挙げられており、見方によっては、懸命に介護する家族であればあるほど重い責任を負うことにもなりかねず、今後に課題を残していると言わざるを得ない。

 また、「法定の監督義務者でなくても、責任無能力者との関係や日常生活でのかかわりの程度から、第三者への加害行為を防ぐため実際に監督しているなど監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合は、監督義務者に準じる者として民法714条が類推で適用される」となると、認知症の人をケアする介護施設等にも賠償責任を問えるという解釈を可能とし、医療や介護のサービス等を提供する事業所にとっては重要な意味をもつ判決となったと言える。このことにより、家族にあっては、介護を忌避して早期に入院や入所を促進し、施設にあっては、行動制限や管理監視を厳しくすることとなり、当事者の自由が制限されるという結果につながってしまえば、今回の画期的とも言われる最高裁判所判決が無に帰してしまう。

 他方で、認知症と思われる人が、自動車運転中の事故や、失火による火災を起こすなどの事件も発生しており、監督義務者がいない場合における被害者救済についても社会全体で受け止め、法整備や公的な保障のあり方も含めて、検討していかなければならない。2025年には700万人を超えるという認知症は、本人や家族をはじめ誰もが直面しうるものであり、その介護は、少子高齢化と相まって社会全体で考えなければならない課題と言える。

 今回の最高裁判所判決を契機として、共生社会の実現を目指し、認知症の人やその家族が安心して生活をすることができる地域づくりと合わせて、そのリスクも社会全体で分かち合う仕組み作りが求められており、早急に検討の場を設定することを要望する。
 
■私たちの今後の取り組み

 認知症の人をはじめとして誰もが住み慣れた場所で望む暮らしを実現することは、超高齢社会における喫緊の課題である。前述の検討の場への参画をはじめとして、認知症への理解を深めるための普及活動、家族が孤立・疲弊しないための支援の充実、地域の特性に応じた見守り体制の創出、地域全体の福祉力を底上げしていく様々な取り組みに、私たちがなお一層積極的に参画し、力を結集していく所存である。
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標題 平成28年度診療報酬改定における精神科訪問看護・指導料に関する緊急要望
日付 2016年2月23日
発翰
番号
JAPSW発第15-346号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 厚生労働省 保険局 医療課長 宮嵜 雅則 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
さて、本年2月10日に中央社会保険医療協議会が厚生労働大臣に対して平成28年度診療報酬改定に係る答申をしたところですが、個別改定項目のうち精神科訪問看護・指導料に関連して、「訪問看護ステーションにおいて訪問看護療養費を算定した月については、末期の悪性腫瘍や神経難病等の利用者等の場合を除いて在宅患者訪問看護・指導料及び精神科訪問看護・指導料を算定できないこととする。」とされました。
 本協会としましては、このような制限を導入することが、精神障害者の地域生活の定着を後退させることになることを強く危惧するところであり、下記のとおり緊急に要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。

【要望事項】
 これまでと同様に、訪問看護ステーションにおいて訪問看護療養費を算定した月についても、精神科訪問看護・指導料を算定できるようにしてください。

【要望の趣旨】
 精神科訪問看護・指導料は、精神科を標榜している保健医療機関の保健師、看護師等が、精神疾患を有する入院中以外の者又はその家族等に対して、患家に訪問して看護及び社会復帰指導等を行った場合に算定するもので、「社会復帰指導等」は主に精神保健福祉士が担っている現状があります。
一方、訪問看護ステーションが算定する精神科訪問看護療養費は、「指定訪問看護」を行った場合に算定するものであることから、別添の事例にあるように精神科診療所等の精神保健福祉士が訪問による社会復帰指導等を担い、訪問看護ステーションからの精神科訪問看護を組み合わせることにより、重度の精神疾患患者の地域生活を支えている現状があります。
 また、精神疾患患者が身体疾患を合併している場合も多く、訪問看護ステーションによる身体疾患を対象とした訪問看護と保健医療機関による精神科訪問看護・指導の同月算定ができなくなることの影響は非常に大きいと言わざるをえません。

以上

添付
資料
訪問看護ステーションによる訪問看護と精神科診療所の精神保健福祉士による精神科訪問看護・指導を併用した取組みの事例及び状況(PDF/411KB)
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標題 認知症徘徊列車事故訴訟・最高裁判決に向けて
日付 2016年2月22日
発信者 社会福祉専門職団体協議会(特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本民夫、公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉克英、公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子、公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠)
ソーシャルワーク教育団体連絡協議会(一般社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川匡俊、一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東秀幸、一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 二木立)

■これまでの経過

 認知症の男性が、駅構内の線路に立ち入り列車と衝突して死亡した事故(2007年12月7日/愛知県大府市)において、JR東海が、遺族に対して約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所の判決が本年3月1日に下される。責任能力を有していない人が起こした不法行為に、家族の監督義務がどこまで及ぶかの判断が示されることになる。

 一審の名古屋地方裁判所の判決は同居の妻のみならず、別居中の長男にも監督義務があるとして請求通りの支払いを命じた。二審の名古屋高等裁判所の判決は、長男に対する請求は退けたものの、本質的には何ら変わることなく、監護義務者として妻一人にその半額の約360万円の損害賠償を負わせる結果となった。この判決を不服として妻、JR東海双方が上告している。
 
■ソーシャルワーカー団体及びソーシャルワーク教育団体としての見解

 私たちソーシャルワーカーは、認知症の人に限らず、高齢や疾病、障害などのため生きづらさを抱えているすべての人に対し、人としての尊厳を守るために様々な働きかけをし、その人々が暮らしやすい社会を構築することを使命としている。また医療や介護の現場で認知症の人や家族と深く関わり、地域で安心して暮らしていくことを支援している専門職である。

 その私たちにとって、家族に全責任を帰する一審、二審判決は、まさに信じがたいものであった。これによって家族が在宅で介護することを忌避し、入院や入所を促進してしまう、施設にあっては行動制限や管理監視が厳しくなり、当事者の自由がさらに制限されてしまうという危惧を抱かざるを得ない。国を挙げて「地域包括ケア」を推進し、誰もが住み慣れた地域で暮らすというビジョンのもと、さまざまな施策を展開している中にあって、その理念に逆行する判決を容認することはできない。

 どれだけ家族や介護者、成年後見人、介護事業者等が努力しても地域のネットワークが構築されても、事故を完全に防ぐことはできないであろう。高等裁判所の判決においても鉄道事業者が一層の安全の向上に努めるべきことを社会的責務と指摘している。このような痛ましい事故を未然に防ぐとともに、万が一事故が起こった場合でも認知症の人とその家族を公的に保障する仕組みなども視野に入れて、社会全体で議論を深める必要がある。

 2025年には700万人を超えるという認知症の人の増加とそれに伴う支援は、今や国民的課題という位置づけで考えなければならない社会問題である。このような社会環境にあって家族や介護者だけにより一層の負担が集中するような仕組みこそ改善しなければならない。司法が正すべきは、いまだ介護の社会化がなされていない日本の実情であり、行政や政治の制度構築の怠慢である。

 私たちソーシャルワーカーは、誰もが住み慣れた場所で望む暮らしの支援と、家族を孤立させず地域で見守る仕組みの創出を実践する専門職として、最高裁判所の判決が、新オレンジプランが掲げる「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」という理念を決して後退させないことを強く望むものである。
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標題 マイナンバーカード等の性別記載欄の廃止を求める声明
日付 2016年1月29日
発信者 社会福祉専門職団体協議会
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫
公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂 由美子
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠

 2016年1月から施行されたマイナンバー制度について、性別違和(旧 性同一性障害)の当事者間では、職場をはじめ、身元確認の対応の場面で非常に苦慮している実態があります。「一般社団法人gid.jp日本性同一性障害と共に生きる人々の会」の行った調査によると、マイナンバーカード等を勤務先に提示したくないため既に退職した事例が複数あります。また、生活が成り立たなくなった場合には自殺を考えるという回答もありました。性別違和の当事者であることが勤務先で明らかになることによって、無理解による差別・偏見の対象となり、精神的に追い込まれ、種々の問題が起こる恐れがあります。

 マイナンバーカード等の使途を考えると、性別欄の記載は必須では無いと思われます。現に、運転免許証や精神障害者保健福祉手帳からは性別欄が抹消されています。性別違和の当事者への合理的配慮として、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」を改正して性別欄を廃止すべきです。

 また、マイナンバーカード等の提示により性別違和が明らかになることによる不当な扱いなどを防止するための普及啓発活動を実施する必要があります。

 私たちは社会福祉の実践に関わる団体として、性別違和の当事者の人権を尊重し、すべての人が生きやすい社会の実現を目指します。

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標題 精神保健福祉法施行3年後の見直しに関する意見
日付 2015年12月28日
発翰
番号
JAPSW発第15-278号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部長 藤井 康弘 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 今般、精神保健福祉法施行3年後の見直しに向けた議論が始まるにあたり、精神障害者の権利擁護と社会的復権を推進する立場から、下記のとおり本協会の意見を提出いたしますので、よろしくお取り計らい賜わりますようお願い申し上げます。


Ⅰ.医療保護入院における移送の在り方

<現状と課題>

○ 衛生行政報告例によると、移送制度が施行された2000年度から2014年度までの15年間に、移送による医療保護入院届の実績がない都道府県・指定都市は17自治体(25.4%)、10件未満も含めると39自治体(58.2%)に及ぶ。
○ 移送制度を積極的に運用している自治体がわずかながらある一方で、運用を行っていない自治体、相談の段階で移送によらない入院または入院によらない医療の提供につなげている自治体があることが推察される。
○ 移送による医療保護入院の需要は、大都市部において高いことが推測されるものの、運用実績との間には相関がまったくみられない。
○ 大都市部において民間の警備会社や移送業者が家族等との契約により高額の費用で移送を行っている実態が依然とあり、移送制度が創設された意義が形骸化している。また、家族等から相談を受けた一部の保健所が民間業者を紹介している実態も変わらない。
○ 和歌山県においては、移送による医療保護入院が必要と考えられる事例についても、まずは多職種によるアウトリーチ支援を導入することで、移送の件数を大幅に減らした実績がある。

≪移送による医療保護入院届件数(2000年度~2014年度の累計)、都道府県・指定都市別)≫
[都道府県]
全 国
2,051
北海道
30
青森県
2
岩手県
14
宮城県
50
秋田県
11
山形県
156
福島県
468
茨城県
12
栃木県
0
群馬県
56
埼玉県
0
千葉県
4
東京県
11
神奈川県
0
新潟県
4
富山県
0
石川県
17
福井県
1
山梨県
2
長野県
77
岐阜県
3
静岡県
2
愛知県
0
三重県
1
滋賀県
8
京都府
32
大阪府
15
兵庫県
32
奈良県
252
和歌山県
136
鳥取県
20
島根県
0
岡山県
37
広島県
2
山口県
56
徳島県
0
香川県
9
愛媛県
22
高知県
3
福岡県
0
佐賀県
64
長崎県
0
熊本県
45
大分県
0
宮崎県
51
鹿児島県
8
沖縄県
4
- - - - - -

[指定都市]
札幌市
16
仙台市
31
さいたま市
0
千葉市
10
横浜市
3
川崎市
0
相模原市
0
新潟市
0
静岡市
1
浜松市
0
名古屋市
1
京都市
243
大阪市
4
堺市
15
神戸市
2
岡山市
1
広島市
2
北九州市
0
福岡市
0
熊本市
0
- - - - - - -
※以下の市は、指定都市移行年度以降の累計数。
さいたま市2003年度、 静岡市2005年度、堺市2006年度、新潟市・浜松市2007年度、
岡山市2009年度、相模原市2010年度、熊本市2012年度

<意見>

1.保健所等を中心とした入院を前提としない医療の提供体制の構築
○ 未受診者やひきこもり状態の者への支援については、3年間の精神障害者アウトリーチ推進事業を経て、2014年度からは障害者総合支援法における都道府県が行う地域生活支援事業の必須事業である「精神障害者地域生活支援広域調整等事業」として保健所や精神保健福祉センター等によるアウトリーチ支援が行われている。
○ 移送制度においても、行政の責任において多職種による医療と連携したアウトリーチ支援を組み込んで、入院を前提としない医療提供を試みたうえで、それでもなお入院医療が必要な状態にある者に移送を適用する仕組みとするべきである。
○ アウトリーチ支援の法定化は、入院医療に係る費用の軽減にもつながるものであり、その財源確保は将来への先行投資として考慮する必要がある。何よりも精神障害者本人が尊厳を保持・回復し地域生活を継続することが可能となる。

2.事前調査における地域支援関係者の関与
○ 新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チームにおける「入院制度に関する議論の整理」で示されていた「事前調査への地域支援関係者の参画」は必要であり、制度化を検討するべきである。
○ しかしながら、移送の事前調査について、地域の支援関係者が法的な根拠がない中で強制性を伴う事例にかかわることはできない。地域の支援関係者は、本人の地域生活支援の中でかかわりをもつのであって、その関係性のなかで事前調査への関与が生じるとしても、それはあくまで本人の権利擁護の立場でのかかわりとなる。
 
Ⅱ 医療保護入院における入院の手続の在り方

<現状と課題>

○ 医療保護入院届出数を、改正精神保健福祉法の施行後(2014年度)と施行前(2013年度、ただし保護者の同意による入院届出数)で比較すると、施行後に約1万件増えている(159,764件→170,079件)。一方、退院届出数も約1万8千件増えている(160,842件→178,962件)。退院届出数のうち何件が直接退院かは不明。[衛生行政報告例による]
○ 精神保健福祉法では、精神科病院の管理者にできるかぎり任意入院とすることの努力義務を課しているものの、本人にとっては強制的な入院形態である医療保護入院が現状として増加傾向にある。国際的にも非自発的入院の割合が突出して多いことが我が国の現状である。
○ 精神病床に任意入院中の精神障害者で、身体合併症による治療(点滴の確保等)のために身体拘束が長期化する場合に、精神疾患の病状とは関係なく医療保護入院に変更されることがある。
○ 「市町村長同意事務処理要領」が改正されたことにより、市町村長同意の適用範囲が狭められ、入院医療が必要な人が入院できないという事態をもたらしている。また、市町村によって実際の運用のあり方は区々である。
○ 保護者制度を廃止した一方、代弁者制度の導入を見送ったことで、それまで保護者に期待されていた入院中の権利擁護機能が欠落した状態となっている。また、家族等による入院時の同意が新設されたことで、保護者制度で問題となっていた強制入院をめぐる家族と本人との葛藤が解決されないままとなっている。

<意見>

1.非自発的入院制度の見直しの必要性
 医療保護入院は、先の法改正で保護者制度を廃止したものの、入院時において私人である家族等の同意要件を法律上存置し、なおかつ本人にとっては強制力を伴う入院制度となっている。
 本来的には、非自発的入院の最小化を図る制度設計がなされるべきで、医療保護入院制度を措置入院制度の1類型に再編し、なんらかの地方公共団体の長に入院同意と入院中の権利擁護機能を持たせるとともに、医療保険を適用するとしても医療費の一部負担金は原則公費負担とするべきである。

2.当面必要と考える現行規定の見直し
1)医療保護入院は名称を変更すること。
 医療保護入院は本来、医療的な観点から保護を要する状態にある精神障害者を入院させる形態であるが、現状としては「保護」が拡大解釈され社会的要件までが入院の判断材料とされている。このため名称を「非任意入院」「非自発的入院」などに変更するべきである。

2)精神保健指定医による入院の必要性の判断基準を法文上規定すること。
 現行法の医療保護入院については、「精神障害者であり、かつ医療及び保護のために入院の必要がある者であって、任意入院が行われる状態にない」ことが入院の判断基準として示されているにすぎない。精神保健指定医による医療保護入院の必要性の判断は、明確な基準の下に行うことを法文上規定すべきであり、その基準は社会的要因を排除したものとする必要がある。

3)入院の要件から家族等の同意を外し、権利擁護者(アドボケイト)が関与する仕組みとすること。
○ 市町村や広域連合は権利擁護センター(仮称)を設置し、入院時に、精神科病院の管理者による通報を受けて、市町村長は権利擁護者(アドボケイト)を選任して、病院に派遣する仕組みとする必要がある。
○ 権利擁護者は、医療保護入院者の「意思の表明の支援」(平成26年度障害者総合福祉推進事業「入院中の精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」報告書の提言による)を行うものとする。
○ 権利擁護者になれる者は、一定の研修を受けた精神保健福祉士、精神障害当事者、家族等幅広くとらえる必要がある。

4)精神医療審査会に専任の弁護士等を1名以上置き、入院後の一定期間内に入院の妥当性を判断し、その結果を本人に告知する仕組みとすること。

 
Ⅲ 医療保護入院者の退院による地域における生活への移行を促進するための措置の在り方

<現状と課題>

1.医療保護入院者の退院促進に関する措置
○ 精神科病院の管理者に医療保護入院者の退院促進に関する措置を講ずる義務が課されたことで、医療機関によっては、医療保護入院者の早期退院に向けた意識が喚起され、法改正による効果が一定程度認められる。
○ 一方、入院時の推定入院期間を一律に11か月として、医療保護入院者退院支援委員会の開催頻度を最小化しようとするところもあり、法改正の趣旨を反映した退院促進の取組みは医療機関によって格差が大きい状況にある。
○ 医療保護入院者に対する退院支援の取組みが充実した一方で、精神科病院の支援人材が増えていないことで、1年以上の任意入院者に対する支援が相対的に薄まっている。
○ 精神保健福祉法の改正とは別に、診療報酬上の精神療養病棟入院料の施設基準として、任意入院者も含めた入院患者に対する「退院支援相談員」の指定・配置や「退院支援委員会」の設置が加えられ、一部で混乱が生じることとなった。

2.退院後生活環境相談員
○ 平成26年障害者総合福祉推進事業の「精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」によると、退院後生活環境相談員の選任状況では、精神保健福祉士が78.8%、看護師19.2%、作業療法士0.6%、臨床心理士0.2%、他1.1%であった。
○ 実際に退院後生活環境相談員を担っている精神保健福祉士からは、書類作成や医療保護入院者退院支援委員会の日程調整に追われ、丁寧な退院支援を行うことが難しい状況となっているといった声が寄せられている。
○ 医療保護入院の定期病状報告書の「退院に向けた取組の状況」欄は原則退院後生活環境相談員が記載することとされているが、実際にはほぼ同じ内容が記載されていたり、生活環境調整の観点からの退院支援の取組みが記載されていなかったりなど、退院後生活環境相談員としての役割遂行が十分にできていない場合があり、研修の実施等が課題として挙げられる。

3.医療保護入院者退院支援委員会
○ 退院支援委員会は、本人と本人が参加を希望する地域の支援者や家族と院内多職種が一堂に会する「ケア会議」としての機能が期待されているが、実際には医療保護入院者本人にとって入院延期の告知を受ける機会となってしまい、ケア会議として機能しているとは言い難い場合がある。
○ 認知症のBPSDの治療のために医療保護入院となった人の中には、入院という概念の理解や言語の理解が難しいために症状安定後も任意入院に変更できず、医療保護入院者退院支援委員会に際しての意思表示も難しい場合がある。
○ 退院支援委員会が、医師の診察時に関係する職員が集まって、形式的に記録だけ残すといった医療機関もある。現状として、病院内の業務の煩雑さの中でどこまで患者にとって必要な退院支援委員会が行えるのかという課題がある。
○ 退院支援委員会への地域援助事業者の参加状況としては、参加したことがある医療機関が32.8%で、その内訳としては、参加件数が1件のみであるところが47.9%であった(平成26年障害者総合福祉推進事業の精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」)。

4.地域援助事業者
○ 相談支援事業所の多くは、援助者として精神科病院の退院支援委員会等に呼ばれていないとの声を聞く。相談支援専門員については、どこの事業所も計画相談に追われて、入院中の地域移行への取組みにまわる余裕がない状況にある。
○ また、医療保護入院者が退院時に障害福祉サービスを利用しないが地域支援が必要な事例は多く、その場合は、指定特定相談支援事業者がかかわらなければならない根拠が薄くなる。
○ また、地域援助事業者が医療機関に訪問する際の経費が保障されていないことも、地域援助事業者による相談援助が進まない要因となっていると考える。地域医療介護総合確保基金を活用して相談支援専門員等を退院支援委員会に招聘する経費を補助している都道府県は11か所程度である。

<意見>

1.退院後生活環境相談員の役割機能の充実強化
○ 退院後生活環境相談員は原則として精神保健福祉士とする。
○ 退院後生活環境相談員の配置は、「1人につき概ね 50人以下の」医療保護入院者を担当するとした現行の通知を、「1人につき30人を限度として」とするべきである。あわせて、作成書類の簡素化についても検討するべきである。
○ 医療保護入院からの移行者も含め、すべての任意入院者についても退院後生活環境相談員の選任を必須とするべきである。
○ 医療と福祉の連携をより具体的に図るための実務研修を退院後生活環境相談員と相談支援専門員を対象とした合同研修カリキュラムとして検討し、都道府県が必須で行う研修として位置づける必要がある。
○ 退院後生活環境相談員の名称を、例えば退院支援相談員といった分かりやすいものに変更するべきである。

2.退院支援委員会の見直し
○ 退院後生活環境相談員が精神保健福祉士でない場合は、病院の職員である精神保健福祉士の退院支援委員会への出席を必須とするべきである。
○ 精神病床の新規入院者の約6割が3か月以内で退院している現状に鑑みて、退院支援委員会は推定入院期間に関係なく、入院後3か月毎の開催としたうえで、本人の参加を原則とするケア会議として位置付けるべきである。
○ 入院が長期化している医療保護入院者については、定期病状報告書を提出する月の前月までに、退院支援委員会を必ず開催する必要がある。
○ 任意入院者については、任意入院後1年を経過時及び以後2年毎の任意入院(継続)同意書を求めることとされているが、これを入院後半年毎または1年毎として、同意書を求める際に必ず退院支援委員会を開催する必要がある。
○ 障害者総合支援法における地域移行支援の対象者を入院後3か月を経過した精神障害者にまで拡大したうえで、退院支援委員会には、地域援助事業者の参加を必須とするべきである。

3.地域援助事業者の関与の促進
○ 現行の通知を見直し、退院後生活環境相談員による地域援助事業者の紹介は、医療保護入院者及び家族等の希望等の必要に応じた努力義務から、地域援助事業者を紹介できる旨の入院時の告知及び入院中の周知を義務付けとするべきである。
○ 地域援助事業者として市町村の障害福祉担当者等を加えるとともに、障害者総合支援法に規定する基幹相談支援センターの設置を明確に推進し、地域援助事業者の協力体制を強化することにより、計画相談の入っていない対象者への地域援助事業者の派遣についても、より積極的に行える体制整備を図る必要がある。

 

Ⅳ 精神科病院に係る入院中の処遇の在り方

<現状と課題>

○ 任意入院者の開放処遇の原則については、都道府県の実地指導における指摘事項とされているが、終日閉鎖の病棟が増えている現状において、実質的に開放処遇の制限が行われている精神科病院が多いのではないか。
○ 本協会が2013年に行った「高齢入院精神障害者に対する精神保健福祉士の支援に関する調査」では、高齢入院精神障害者(558名)の実態として、「任意入院」7割、「退院の希望者」4割、本人の退院意向を「把握していない」112名という結果であり、任意入院者の地域移行や権利擁護の仕組みがないことが明らかになった。
○ 精神病床の在院患者数は減少傾向にあるものの、急性期医療を専門とする病棟の増加や認知症の入院者の増加と相まって精神科病院における隔離や身体拘束は増えている。

≪精神科病院における隔離・身体拘束数の推移(資料:精神保健福祉資料)≫※各年とも6月30日の件数

- 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
隔離 7,673 8,097 8,567 8,247 8,456 8,800 9,132 9,283 9,791
身体拘束 5,242 5,623 6,008 6,786 8,057 8,193 8,930 9,254 9,695

○ 任意入院者の退院制限を行うことができる精神科病院の基準の一つとして、「精神科病院に入院中の者に対する行動の制限がその症状に応じて最も制限の少ない方法により行われているかどうかを審議するため、行動制限最小化委員会を設けていること」とされているものの、行動制限最小化委員会の機能等については診療報酬上の医療保護入院料等診療料の施設基準等の規定にとどまっている。
○ 認知症高齢者に対する身体拘束等の行動制限については、介護保険施設等では、入所者の「生命又は身体を保護するための緊急やむを得ない場合」を除き禁止されている一方、精神科病院では認知症者に対する隔離・身体拘束を精神保健指定医の判断で行うことができる。このことにより介護保険施設では身体拘束ができないことを理由とした精神科病院への認知症高齢者の入院を依頼してくる場合もある。
○ また、精神科病院では以下の項目に該当する場合は、隔離及び身体拘束の対象外とされており、介護保険施設における身体拘束の定義と差異が生じている。(「精神保健福祉法改正に関する疑義照会に関する回答」(厚生省精神保健課、2000年7月31日)
[精神科病院において隔離及び身体拘束にあたらない行為]
 ①車椅子移動の際の転落防止を目的とした安全ベルトによる固定
 ②就寝時にベッドから転落を防止するための短時間の身体拘束
 ③身体疾患に対する治療行為としての一時的な点滴中の固定
 ④感染症拡散を防止するためのサムターンロック(内側から解錠できる)による施錠
○ 件数としては少ないものの、措置入院者において措置症状が消退しているにもかかわらず、他の要因で措置が解除されていない事例がある。

<意見>

1.行動制限ガイドライン(仮称)の作成
 以下の内容を盛り込んだガイドラインを作成し、精神科病院における行動制限に係る定義を明確にするとともに、以下のように行動制限最小化委員会が行うべき役割・機能を明確にし、隔離、身体拘束及びその他の行動制限が安易に行われることがないよう医療機関に徹底するべきである。
1)任意入院者の開放処遇の制限や隔離及び身体拘束についても行動制限最小化委員会における審査の対象とすること。
2)認知症患者の入院が増加傾向にあり、改めて隔離及び身体拘束の対象外とされている行為についても、カルテへの記載を義務付けること。
 
Ⅴ 退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明についての支援の在り方

<現状と課題>

○ 入院が長期化している患者に対して、病院の職員が本人の退院をはじめとした今後の意向や希望を確認する機会をほとんど持っていない現状がある。
○ 病院の職員や外部の支援者が入院患者に対して地域移行に向けたかかわりや取り組みを行うこと自体も、当該患者の意思決定及び意思の表明を支援することとなる。

<意見>

1.入院中の精神障害者の意思決定及び意思の表明を支援する仕組みの導入
○ 医療保護入院については、入院後の一定期間内に権利擁護者(アドボケイト)と面会できる仕組みが必要である。
○ 入院期間が3か月(または6か月)を経過したすべての入院患者には、まずは病院の職員が定期的に本人の退院等に対する意向を確認する機会を必ず設けることとするべきである。
○ また、入院形態に関係なく入院期間が1年を超えた入院患者については、障害者総合支援法の改正に合わせて策定が予定されている「意思決定支援ガイドライン(仮称)」に基づき、計画相談支援や地域移行支援等の障害福祉サービスの利用を進めていくべきである。
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標題 「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告案(たたき台)」についての意見
日付 2015年11月30日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂 由美子
一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 二木 立
一般社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川 匡俊
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東 秀幸
一般社団法人日本社会福祉学会 会長 岩田 正美
提出先 厚生労働省社会・援護局長 石井 淳子 様
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 香取 照幸 様
社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会 委員長 松原 康雄 様

 貴職におかれましては、子ども家庭支援施策の推進に日々ご尽力されていることに敬意を表します。

 平成27年11月27日に開催された「第3回新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」において「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告案(たたき台)」(以下、「たたき台」という。)が示されました。たたき台で示されている「2.基本的な考え方」及び、子どもの権利を主体とすることや子どもの最善の利益を優先することが盛り込まれた点は、極めて重要な視点であると認識しております。

 また、これらの基本的な考え方を実現するうえで、「8.職員の専門性の向上」にある【抜本的法改正で実現させるべき姿】では、「児童相談所に配置することが必要な人材については、法律上明確に位置づける」と言及している点も必要性を認識しておりますが、記載されている事項のうち、以下の点について、意見いたします。

   1 児童相談所へ配置する職員の法律上の規定について
 
 たたき台「8-(1)-①」では、「必要な人材については、法律上明確に位置づける」こととされている。

 ここでは「教育・指導・訓練担当児童福祉司」について「次に述べる公的資格を有する者」を任用要件とするとある。「次に述べる公的資格」が、次項目にある「児童心理司、保健師、医師」を指すのであれば、これは「児童福祉司として一定期間以上の実務経験を有する者」とするべきである。

 また、児童相談所に必要な人材として、「児童心理司、保健師、医師について法律上、児童相談所への配置を明記する。」ということであれば、ソーシャルワーク業務を行う国家資格である社会福祉士及び精神保健福祉士が記されておらず、本委員会の検討の経緯及びたたき台における児童相談所の職員に求められる専門性の考え方に鑑みて、この記述は到底容認できるものではなく、当然のことながら社会福祉士及び精神保健福祉士も法律上に明記することとすべきである。

   2 指導的職員の資格創設にかかる委員会設置について
 
 たたき台「12-②法改正時に制度等の整備時期を定め、一定期間内で実施に移すべき事項」において、「子ども家庭福祉を担う指導的職員の資格創設には別途委員会を設置して検討する」とされている。たたき台に記述された「指導的職員が有すべき知識・技能はソーシャルワークを基盤」とすることには全く同感であり、検討を行う委員会の設置に際しては、単に私たちソーシャルワーク関係団体へのヒアリング等で済ませるのではなく、私たちソーシャルワーク分野に関わる団体から委員を選任した上で検討すべきである。

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標題 「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」における新しい地域包括支援体制を担う人材に係る要望書
日付 2015年11月27日
発翰
番号
JAPSW発第15-250号/精養協発第2015-42号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東 秀幸
提出先 厚生労働省社会・援護局長 石井 淳子 様

 平素より両協会の活動に多大なるご理解ご協力を賜り厚く感謝申しあげます。

 さて、貴省におかれては2015年9月17日に、新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチームによる「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現-新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン-」(以下「新たな福祉提供ビジョン」という。)を公表されたところです。

 新たな福祉提供ビジョンでは、今後の福祉サービスの提供体制の改革の方向性として、全世代・全対象型の新しい地域包括支援体制の確立を目指し、生産性の向上と効率的なサービス提供体制の確立とともに総合的な福祉人材の確保・育成について検討することが盛り込まれました。また、「新しい地域包括支援体制を担う人材の育成・確保のための具体的方策」として、「社会福祉士については、複合的な課題を抱える者の支援においてその知識・技能を発揮することが期待されることから、新しい地域包括支援体制におけるコーディネート人材としての活用を含め、そのあり方や機能を明確化する」ことが示されました。

 コーディネート人材として社会福祉士のみが取り上げられていることに関しては、同じソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士の職能団体及び養成団体として看過できないことであり、下記の通り要望いたします。

 
 
  1.新しい地域包括支援体制におけるコーディネート人材として、社会福祉士とともに精神保健福祉士も位置づけたうえで、そのあり方や機能について検討してください。

  [参考資料]
○精神保健福祉士が任用要件とされている職種は行政機関、医療分野、障害保健福祉分野にとどまらず、司法分野、教育分野などの関連分野にも拡がっています。[PDF:140KB
○公益社団法人日本精神保健福祉士協会における構成員の勤務先種別構成比(2015年年10月31日現在)[PDF:213KB
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標題 「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告骨子案」についての要望
日付 2015年11月25日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂 由美子
一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 二木 立
一般社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川 匡俊
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東 秀幸
一般社団法人日本社会福祉学会 会長 岩田 正美
提出先 厚生労働省社会・援護局長 石井 淳子 様
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 香取 照幸 様
社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会 委員長 松原 康雄 様

 貴職におかれましては、子ども家庭支援施策の推進に日々ご尽力されていることに敬意を表します。

 平成27年11月18日に開催された「第2回新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」において「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告 骨子案」が示されました。本報告は、今後の子ども家庭福祉に関する総合的な方向性を示したものとして極めて重要であると認識しております。

 平成26年8月29日に閣議決定された「子供の貧困対策に関する大綱」にも、児童相談所の相談機能強化及び社会的養護施設の体制整備に関する方針が示されておりますが、児童虐待をはじめ、子どもの問題の背景には、貧困や社会関係の困難等、社会福祉一般に共通する現代の福祉課題があり、子ども家庭福祉を担う専門職には、それらの課題を解決する力量や見通す力量が必要であり、それらを踏まえた専門職養成や人材の確保を検討する必要があります。

 私たちは、ソーシャルワーク分野に関わる団体として、本報告骨子案に係る以下の点について要望いたします。

  1.「国家資格化」について
   骨子案「2-(2)子ども家庭福祉を担う専門職の資格化」において、「専門職を国家資格として創設する」とあるが、児童相談所の基幹職員(スーパーバイザー)等について、児童相談所における現状と課題からその可能性については認識しつつも、現時点においては拙速に新たな国家資格の創設を検討するのではなく、当該職員の専門性を高めるための配置基準等を明確にしたうえでの任用要件としていただきたい。
 また、その際は以下の理由から社会福祉士及び精神保健福祉士を基礎要件としていただきたい。
  【理由】
  ○私たちは、本委員会の前身となる「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」(以下、「前委員会」という。)が本年8月に取りまとめた報告書に対し、委員長宛、別添のとおり提案書を提出した。

○現在の児童福祉司の任用において、専門資格(国家資格)有資格をもって要件を満たすものは社会福祉士、精神保健福祉士及び医師となっている。

○とりわけ、社会福祉士については、養成カリキュラムに科目「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」をはじめ、児童・家庭を取り巻く諸課題に対応するために必要となる制度や、「相談援助の基盤と専門職」や「相談援助の理論と方法」、「相談援助実習・演習」などのソーシャルワークの知識と技術を体系的かつ実践的に習得するための科目群で養成が行われている。にもかかわらず、児童相談所児童福祉司の社会福祉士有資格者の割合が29.5%(平成27 年4月1日現在)と低く、既存の国家資格を十分に活用されているとは言えない状況である。

○児童虐待をはじめ、子どもの問題の背景には、貧困や社会関係の困難等、社会福祉一般に共通する現代の福祉課題があり、子ども家庭福祉を担う専門職には、それらの課題を解決する力量や見通す力量が必要である。

○従って、児童相談所職員の専門性の向上は、社会福祉士や精神保健福祉士(既存の国家資格)の配置基準等を明確にしたうえで、専門性強化のための研修を拡充することなどで十分に図られるものであり、現時点において新たな国家資格を拙速に創設する必然性はないと思われる。
 
  2.基幹職員(スーパーバイザー)の資格について
  ○児童相談所のスーパーバイザーは、児童福祉司及びその他相談担当職員に対して専門的見地から教育・訓練・指導を行う職である。前委員会報告書では、児童福祉司の専門性の向上を担保するためには「ソーシャルワークに着目した国家資格化を目指した検討が必要」と報告している。児童相談所の業務と児童福祉司及びその他の相談担当職員に求められる専門性は、ソーシャルワークに関する知識及び技術を基盤とするべきであり、基幹職員(スーパーバイザー)の基礎資格は「社会福祉士及び精神保健福祉士のみ」としていただきたい。

○実務経験の範囲については、「相談援助」に係る業務に限ることを明示していただきたい。

○社会福祉士及び精神保健福祉士の関係団体で実施している認定社会福祉士制度の活用について検討を行うことを本報告書に明記していただきたい。

  3.児童福祉司の任用要件について
  ○本報告骨子案では、児童福祉司の任用要件として「社会福祉士、精神保健福祉士、児童福祉司養成校卒業者を基本」とされているが、児童福祉司には児童虐待をはじめ、子どもの問題の背景にある貧困や社会関係の困難等、社会福祉一般に共通する現代の福祉課題があり、それらの課題を解決する力量や見通す力量が必要である。

○従って、それらの知識・技術の習得に必要となる体系的な教育内容で養成が行われている社会福祉士及び精神保健福祉士の積極的な活用について、関係自治体の長に対して技術的助言をお願いしたい。
  以上
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標題 障害者総合支援法の見直しに関する意見書
日付 2015年9月18日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 自由民主党 政務調査会 厚生労働部会障害福祉委員長 高島 修一 様、障害児者問題調査会長 衛藤 晟一 様
公明党 障がい者福祉委員会 委員長 髙木 美智代 様、事務局長 輿水 恵一 様

 障害者総合支援法の見直しにあたり、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、各検討項目に沿って以下の通り意見を申しあげます。

  Ⅰ 常時介護を要する障害者等に対する支援について
 精神障害者の場合、「常時介護を要する」者は少ないものの、身体的な直接介護だけでなく、常時の見守りや服薬の指導等といった「常時の支援」があれば地域生活が可能となる長期入院者等は多く存在しており、「常時支援を要する障害者」のための包括的な支援サービスの創設が望まれる。

 またその際には、身体介護、家事援助、移動介護の組み合わせ以外にも、見守りや精神科訪問看護等による服薬指導等の医療的ケアを並行的に導入する必要がある。


Ⅲ 障害者の就労支援について

【就労支援事業の機能等】
 就労継続支援A型事業所及び就労移行支援事業所については、必ずしも良質な障害福祉サービスとして支援が提供されていない事業所もあることから、(自立支援)協議会等による第三者評価の仕組みを導入する必要がある。

 また、障害者就業・生活支援センターとの機能の棲み分けの問題はあるにしても、就労支援には相談機能も含めた「生活支援」が欠かせないことからも、人員体制や加算についても見直しが必要である。

 精神障害者に特化した課題としては、障害者の雇用施策と同様に精神障害者を重度加算の対象とすることや、報酬体系(基本報酬と加算・減算のあり方)の根本的な見直しが必要である。

【就労定着に向けた支援体制】
 より職場定着率を上げるために、利用者との関係性が十分に取れている就労支援事業所が職場定着支援を行いやすい体制(定着支援としている対象者の就労移行支援欠員分の保障等)を検討し、継続的な伴走型支援が制度に位置づけられる必要がある。


Ⅳ 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について

 支給決定プロセスにおいて、現行の審査会による障害支援区分認定に基づく支給決定というプロセスは廃止すべきである。
 障害者が自ら望む暮らしを実現するために、相談支援専門員が障害者本人のニーズを的確にアセスメントしたうえで、本人の意向を最大限取り入れたサービス等利用計画案を作成し、自治体担当者との協議・調整により支給決定を行うプロセスに転換する必要がある。

 また、計画相談支援は相談支援専門員の独占的業務とされているものの、相談支援専門員の要件となる実務経験は幅広く認められており、ケアマネジメントのプロセスを担ううえで質の担保が危ぶまれる。このため相談支援専門員の基礎資格は、ソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士または社会福祉士を原則とすべきである。


Ⅴ 障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について

 成年後見制度の利用を促進する前提として、我が国の成年後見制度のあり様について、障害者権利条約に照らして妥当かどうか再検討し、必要な見直しを行うことが必要と考える。


Ⅶ 精神障害者に対する支援の在り方について

【病院から地域に移行するために必要なサービス】
 長期入院精神障害者の高齢化が進む中、地域移行支援の量的拡充は喫緊の課題であり、ピアサポーターの養成、精神科病院の職員に対する地域移行に関する研修の義務化、精神保健福祉法上の地域援助事業者の活動に係る財源の確保、(自立支援)協議会における地域移行部会等の設置と精神科病院からの参加の義務づけ等、必要な手立てを講じていく必要がある。

【精神障害者の特徴に応じた地域生活支援の在り方】
 常時介護を要しないものの、精神障害の可変性や不安定性を有するという特徴に鑑みて、状態像の変化によっては集中的な見守りや助言指導、緊急時の支援等が必要な精神障害者は多く、介護保険サービスにおける「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を参考としつつ、精神障害者の特性に合わせた医療と介護(福祉)の連携による新たな包括的支援サービスを創設すべきである。

 さらに以下のようなサービスの見直し及び創設が必要と考える。
・空き家・空きビルの障害者グループホームへの転用に対する補助等の制度化
・通所とは切り離した独立した訪問型自立訓練(機能訓練・生活訓練)の創設
・小規模多機能居宅介護の創設
・重厚な相談支援を含む地域定着支援Ⅱの創設(市町村の責務として行う「一般的な相談」の一部個別給付化)
・入院中の「重度かつ慢性」の精神障害者の退院を推進するための宿泊型自立訓練の強化
・医療型短期入所の機能の見直し(従来の精神科病院への「休息入院」機能の追加)


Ⅷ 高齢の障害者に対する支援の在り方について

【利用者負担】
 介護保険サービスに移行することで生ずる利用料を支払えないことを理由に、サービス利用を諦めてしまうことのないよう、低所得者等への何等かの経済的措置を講ずるべきである。

【介護保険サービス事業所における65歳以降の障害者の適切な支援】
 高齢となった精神障害者の地域移行先やサービス利用の選択肢となりうる介護保険サービス事業所に対して、適切な支援を行うための研修の義務づけ等を行っていく必要がある。

【心身機能が低下した高齢障害者の対応】
 障害者グループホームを利用しながら日中は通所系の介護保険サービスを利用できるなど、障害福祉サービスと介護保険サービスを柔軟に併用できることが必要である。
  以上 
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標題 「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会報告書」に関する提案及び依頼
日付 2015年9月17日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
一般社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川 匡俊
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 伊東 秀幸
一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟 会長 二木 立
一般社団法人日本社会福祉学会 会長 岩田 正美
提出先 児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会 委員長 松原 康雄 様 

 貴職におかれましては、児童虐待防止施策の推進に日々ご尽力されていることに敬意を表します。

 さて、2015年8月28日付け「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会報告書」が公表されました。私たち、社会福祉士及び精神保健福祉士関係5団体及びソーシャルワーク研究者が多数所属する日本社会福祉学会は、本報告書の、とりわけ児童相談所が専門的な支援を確実に行えるための体制強化(報告書3-(4)-①:pp13-15)について、下記及び別紙のとおり提案いたしますので、今後の専門委員会における検討に付していただけますよう、お願いいたします。

 なお、下記4点及び付随する論点と意見の詳細につきましては別紙のとおりです。

 

  ■3-(4)-①-イ:「児童相談所職員の専門性の確保のための専門研修を充実」について
   児童福祉司をはじめとする児童相談所職員の専門性確保に向けた専門研修体系構築のため、私たちは相応の貢献ができるものと認識しており、積極的に協力していく所存ですので、専門委員会におかれましても、私たちが保有する資源の積極的な活用を検討してください。

  ■3-(4)-①-ウ:「児童福祉司の国家資格化」について 
   新たな資格を検討するのではなく、(または検討する前に)すでにソーシャルワークに着目した厚生労働省所管の国家資格である社会福祉士及び精神保健福祉士の登録者が約26万人おりますので、これら国家資格の積極的活用を前提とした検討を提案します。

  ■3-(4)-①-ウ:「児童福祉司の国家資格化」について
    いわゆる三科目主事(社会福祉主事指定科目のうち3科目を修めて大学を卒業すればよい)については、対人援助職に必要となる体系的な教育を経ない任用ルートです。ついては、児童福祉司の任用にあたっては、社会福祉士養成施設ルート等(通信課程の活用など)を活用することにより、現在の児童福祉司に社会福祉士や精神保健福祉士を取得させて、将来的にはこのルートを廃止する必要があると認識しています。

  ■「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」及びWGへの参加について
   社会福祉士・精神保健福祉士関係の立場から専門委員会委員として参加できるよう、お取り計らいください。

  [別紙]
  児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会報告書」に関する論点と提案及び依頼の詳細

  ①-イ:「児童相談所職員の専門性の確保のための専門研修を充実」について 
  ○ 日本社会福祉士養成校協会並びに日本精神保健福祉士養成校協会は全国285校の大学等が会員となって組織される一般社団法人であり、各会員校には児童家庭福祉分野を専門とする教育者・研究者が所属しており、これらの教育者・研究者は、我が国の児童・家庭を対象とした支援や児童家庭福祉制度に精通していますので、専門研修を全国で実施する場合の講師等の人材紹介や実施にかかる会場設備の提供が可能です。【別添資料1】

○ 日本社会福祉士会及び日本精神保健福祉士協会は、すべての都道府県に組織があり、児童・家庭分野に関する専門研修を実施しています。また、社会福祉士有資格者が一定の実務経験を経て、研修の単位を取得していく『認定社会福祉士制度』を2012年から開始し、認定分野に『児童・家庭分野』を設けて研修を実施しています。児童福祉司の専門研修においてこれらのプログラムをベースとした研修体系の構築と研修機会の提供が可能です。【別添資料2】

 児童福祉司をはじめとする児童相談所職員の専門性確保に向けた専門研修体系構築のため、私たちは相応の貢献ができるものと認識しており、積極的に協力していく所存ですので、専門委員会におかれましても、私たちが保有する資源の積極的な活用を検討してください。

  ①-ウ:「児童福祉司の国家資格化」について 
   児童福祉司の専門性の向上を担保する必要性については、私たちも同様に認識しています。また、児童福祉司を「ソーシャルワークに着目した国家資格有資格者」とすることには賛同いたしますが、新たな資格を検討するのではなく、(または検討する前に)すでにソーシャルワークに着目した厚生労働省所管の国家資格である社会福祉士及び精神保健福祉士の登録者が約26万人おりますので、これら国家資格の積極的活用を前提とした検討を提案します。

 論点は次の通りです。

○ 社会福祉士養成教育のカリキュラムでは、指定科目に「児童・家庭を対象とした支援と児童家庭福祉制度」を必須科目に位置づけて養成が行われており、その教育内容については【別添資料3-1】のとおり、児童・家庭を取り巻く社会情勢の理解や、児童福祉法、児童虐待防止法をはじめとする児童・家庭に対する支援に必要な法制度や支援体制・支援方法についての理解を求めています。また、児童相談所は社会福祉士・精神保健福祉士養成にかかる実習指定施設として厚生労働省告示で定め、資格取得者が児童相談所等において専門性を担保しつつ業務遂行ができるようにすることを想定して教育が行われています。

○ また、【別添資料3-2】のとおり社会福祉士資格を取得する養成ルートとして、福祉系大学や指定養成施設ルートとは別に、現任の児童福祉司等いわゆる司職の経験が4年以上で社会福祉士短期養成施設(主に通信で最短9ヶ月の課程)を修了すれば、社会福祉士の国家試験受験資格が得られことになっています。これは、平成19年に社会福祉士及び介護福祉士法が改正された際、行政機関の児童福祉司をはじめとする司職の経験が5年以上であれば受験資格が得られたものを、専門性を向上する必要性から養成ルートが見直されたことによるものです。

○ 現在の児童福祉司の任用要件を満たすために必要なルートは、【別添資料4】のルートがありますが、このうち、ソーシャルワークに着目した国家資格をベースとするルートは、専門資格ルートのうち社会福祉士と精神保健福祉士のルートのみとなります。
 ただし、児童福祉司における社会福祉士有資格者は23.6%(平成24年)であり、その比率は依然として低く、ソーシャルワーク有資格者は4分の一以下の現状です。

○ また、上述したとおり、『認定社会福祉士制度』では、認定分野に『児童・家庭分野』設けています。児童福祉司の専門性の向上を促す観点からも、将来的には認定社会福祉士制度を活用することが可能です。

 以上の論点から、児童福祉司の専門性の向上を図るために「児童福祉司を国家資格化」については、すでにあるソーシャルワークに着目した国家資格である社会福祉士と精神保健福祉士国家資格の活用を前提に、児童福祉司の専門性向上に向けた検討を行うことを提案いたします。

  ①-ウ:「資格化の検討に限らず、児童福祉司の専門性を高める方策」について
  ○ これは、児童福祉司の任用要件とも関連しますが、児童福祉司を「ソーシャルワークに着目した」人材にするためには、現行の任用要件のうち、とりわけ、いわゆる三科目主事(社会福祉主事指定科目のうち3科目を修めて大学を卒業すればよい)については、対人援助職に必要となる体系的な教育を経ない任用ルートです。ついては、児童福祉司の任用にあたっては、社会福祉士養成施設ルート等(通信課程の活用など)を活用することにより、現在の児童福祉司に社会福祉士や精神保健福祉士を取得させて、将来的にはこのルートを廃止する必要があると認識しています。

○ また、任用要件のうち保健師等関連資格等ルートにおいても、実務経験とともに、例えば社会福祉士養成課程のうち最低限必要となるソーシャルワークに関する教育課程の修了を付加し、将来的には社会福祉士や精神保健福祉士の資格取得につながるルート設定が必要であると考えます。

  ■最後に
   私たち社会福祉士及び精神保健福祉士関連5団体並びに日本社会福祉学会は、昨今の子どもを取り巻く社会情勢、子どもの貧困や、虐待の実態、通告件数の急激な増加等により児童相談所に過大な負担がかかり、児童・家庭に対する支援が限界になりつつある状況などを憂慮し、都道府県等の協力を得ながら手厚い人的配置を進めていく必要があると認識しております。

 私たちソーシャルワーク専門職である社会福祉士・精神保健福祉士の視点から子ども家庭福祉のあり方の検討に加わることは、子どもの最善の利益を保障する観点からも重要であるとともに、私たちもよりよいソーシャルワーク専門職の養成に尽力し、養成団体と専門職団体が一体となって社会福祉士・精神保健福祉士の専門性向上のために全力を尽くす所存です。

 ぜひ、専門委員会における建設的かつ効果的な検討がなされることを期待いたします。
   
  【別添資料1~4】 [PDF:1.57MB
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標題 自殺対策基本法の改正に向けて
日付 2015年8月6日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会
提出先 自殺対策を推進する議員の会
資料 意見書(PDF/608KB)
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標題 安全保障関連法案衆議院採決に関する声明
日付 2015年8月6日
発信者 日本医療社会福祉学会 会長 岡本 民夫
日本ソーシャルワーク学会 川廷 宗之
一般社団法人日本社会福祉学会 会長 岩田 正美
公益社団法人日本介護福祉士会 会長 石橋 真二
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本 民夫
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉 克英

 私たちは、本年7月15日の衆議院平和安全法制特別委員会での安全保障関連法案の採決及び16日の衆議院本会議での採決に抗議します。

 今回の法案は、国民一人一人の生活と我が国の将来に関わる極めて重要なものであり、慎重な審議が行われる必要があります。

 しかしながら、今回の採決は、安倍首相自身も発言しているように、「まだ国民の理解が進んでいる状況ではない」中で行われたもので、地方議会等でも法案成立に対し反対論や慎重論が少なくない状況であり、国民の理解についても進んでいるとは言い難い状態にあります。

 多数決以前に論議を尽くし、かつ出来る限り少数意見にも耳を傾けるという民主主義の原則に照らして、不適切な方法であったと言わざるを得ません。

 私たちは、平和を擁護し、人権と社会正義を守るソーシャルワーカー、ソーシャルケアワーカー及び社会福祉関連団体として、今後の参議院における、国民全てが納得できることを目指した慎重な審議を強く要望いたします。

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標題 精神障害に係る障害年金の認定に関する要望
日付 2015年7月28日
発翰
番号
JAPSW発第15-145号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 厚生労働省 年金局 事業管理課長 大西 友弘 様

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。
 日頃より、本協会事業に格別のご理解とご支援を賜わり、厚くお礼申しあげます。
 さて、近年、精神障害を事由とする障害年金受給者において、障害状態確認届の審査により、級落ち及び支給停止となる事例が増えているという声が現場の精神保健福祉士から聞かれたことから、本協会は2014年に「障害年金の等級変更等に係る調査」を行い、その結果から、前回の診断書と同じ記載内容であった場合でも等級変更(級落ち)や支給停止となる事例が全国的にみられ、診断書の就労状況欄への記載があった場合にも、同様の状況にあることが分かりました。 
 わが国の障害年金は、精神障害者にとって重要な所得保障制度であり、多くの受給者は障害年金を基盤として生計を立てています。突然の級落ちや支給停止は、受給者の生活基盤を揺るがすばかりか、病状にも大きな影響を与えかねず、また、受給者の就労意欲を削ぐものとなります。
 現在、「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」(以下、「専門家検討会」という。)において、障害年金の新規申請に係る等級判定のガイドラインが検討されているところですが、精神障害者の支援を担う社会福祉専門職団体の立場から、下記の通り要望いたしますので、ご検討くださいますよう、よろしくお願い申しあげます。

1.ガイドラインにおいて「等級の目安」を設ける場合は、障害基礎年金と障害厚生年金を分けてください。

 第5回の専門家検討会では、「日常生活能力の程度」及び「日常生活能力の判定」を基に、認定する等級の目安を設けたうえで、総合的に等級判定することが示されました。しかしながら、等級の目安の基礎となるデータは障害基礎年金と障害厚生年金のサンプル調査を合体したものになっています。
 第1回の専門家検討会では障害基礎年金と障害厚生年金では、等級判定の基準が違うことを検討会構成員である障害厚生年金の認定医が明らかにしているところでもあり、判定基準が違うものが混在することで、障害基礎年金の等級認定において、これまで等級非該当となる割合が低かった地域において非該当となる割合が高くなるといった事態が生じることを危惧します。
 そのため、等級の目安を示す場合は、少なくとも障害基礎年金と障害厚生年金を分けて、それぞれのサンプル調査を基に等級の目安を示す必要があると考えます。

2.障害状態確認届の審査についても適正化を図ってください。

 本協会の調査からは、審査が都道府県単位で行われる障害基礎年金と全国1か所で行われる障害厚生年金のいずれの場合も、級落ちや支給停止の事例がみられます。特に、障害認定基準の改定により、統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害については、症状性を含む器質性精神障害や知的障害、発達障害とともに、「現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」とされたにもかかわらず、審査過程でそのことが十分に吟味されているのか疑問を持たざるを得ない状況となっています。
 第1回の専門家検討会では参考資料「障害基礎年金の支給決定等に関するデータ」として「再認定に関するデータ」が示されていますが、地域差を比較できるデータとはなっていません。信頼される障害年金制度としていくために、まずは級落ちや支給停止に関するデータを明らかにしたうえで、障害状態確認届の審査の妥当性を担保する仕組みを早急に導入してください。
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標題 安全保障関連法案衆議院採決に関する会長声明
日付 2015年7月19日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会は、個人としての尊厳を尊び、人と環境の関係を捉える視点を持ち、共生社会の実現をめざすソーシャルワーク専門職団体です。

 今回の法案は、国民1人1人の生活と我が国の将来において極めて重要なものであり、慎重な審議が行われる必要があったと考えます。しかしながら、7月16日の衆議院本会議において平和安全法整備法案及び国際平和支援法案が可決されました。このことは、それまでの審議過程において民主主義の原則に照らし、大きな禍根を残したといわざるを得ません。

 これまでの報道なども踏まえ、本法案においては、地方議会等でも法案成立に対し、反対論や慎重論も多く、国民の理解についても進んでいるとはいいがたい状態にあります。

 人権と社会正義、多様性の尊重の原理をよりどころにするソーシャルワーカーとして、参議院においては、政府として国民に対する説明責任を果たすとともに、国民の声に耳を傾け、国民すべてが納得できることをめざし、慎重にも慎重を重ねた審議を尽くしていただくことを強く要望いたします。

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標題 第51回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第14回日本精神保健福祉士学会学術集会アピール
日付 2015年6月27日
発信者 第51回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第14回日本精神保健福祉士学会学術集会 参加者一同

 私たちは、6月26日、27日の二日間、福島県郡山市にて「共生・創造・未来~はじめようここから!~」をテーマとする第51回公益社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会・第14回日本精神保健福祉士学会学術集会に集いました。東日本大震災による未曾有の被害により、第48回全国大会・第11回学術集会は福島県での開催を断念せざるをえませんでした。あらためて今日のこの日をこの地で迎えることができたことに深い感慨を覚えています。

 東日本大震災の発災から4年余りが経過しました。福島県は地震、津波、原発事故、風評被害の四重苦ともいうべき被害に見舞われました。原子力災害による避難者は未だに11万人を数え、住み慣れた土地を奪われた人びとは先行きが見通せない一方で、新しい土地での生活を始めることもできないという不安定な状態に置かれたままです。しかし、そのような状況の中でも希望を失わずに福島の再生に向けて奮闘している多くの「生活者」がいます。そして生活者でありながら専門職としての支援を続けている私たちの仲間である精神保健福祉士がいます。

 本協会は昨年設立50周年を迎え、本年は新たな半世紀に向けた第一歩の年となります。過去の軌跡を確認しつつ、私たちは専門職倫理を基盤として常に創造的な知恵と技術を磨いていく必要があります。その先に真の共生社会の実現という未来が拓かれることを確信します。

 私たちは、福島県をはじめとする東北の多くの仲間の支えにより、本大会の成功を経験しました。また、大きな痛みを抱えながらも明日の変化・成長を信じる人びとの力強さを学びました。そして私たちは、今後も精神障害者の社会的復権の実現に向けて、まずは目の前にいるクライエントの希望や想いを丁寧に聴き取り、社会的連帯の下に社会変革を推し進め、ソーシャルワーカーとしての使命を果たしていくことを強くアピールします。
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標題 2016年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2015年6月11日
発翰
番号
JAPSW発第15-88号の1および2
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 厚生労働省 保険局 医療課長 宮嵜 雅則 様
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 冨澤 一郎 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
さて、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定に基づき、2014年4月1日に「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」が告示されるとともに、同年7月14日には「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」が公表され、「長期入院精神障害者の地域移行及び精神医療の将来像」として、1)長期入院精神障害者の地域移行を進めるため、本人に対する支援として、「退院に向けた意欲の喚起(退院支援意欲の喚起を含む)」「本人の意向に沿った移行支援」「地域生活の支援」を徹底して実施すること、2)精神医療の質を一般医療と同等に良質かつ適切なものとするため、精神病床を適正化し、将来的に不必要となる病床を削減するといった病院の構造改革が必要であること、が示されました。
 本協会としましては、精神障害者の地域生活への移行の強化および地域生活の定着のためには、精神科医療機関内外に渡るネットワークの構築によるチーム医療の推進、およびその体制整備が極めて重要であり、それらに対する診療報酬上の適正な評価が必要であると認識しているところです。
 つきましては、以上の観点から、下記のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。

1 精神病棟入院基本料(区分A103)における精神保健福祉士配置加算の施設基準のうち、在宅移行率要件を緩和してください。

<具体的要望内容>
 当該加算の施設基準として掲げられている当該病棟入院患者の1年以内在宅移行率を、現行の9割以上から8割以上に緩和してください。
<理由> 
 平成24年度精神保健福祉資料によると、入院から1年以内に退院した患者は全国平均で87%ですが、転院および死亡による退院者13%が含まれており、当該加算の施設基準に照らした1年以内在宅移行率は74%ということになります(資料1-1)。
 このような状況に照らして、精神病棟入院基本料算定病棟において9割の在宅移行率を達成することは限りなく困難であり、実際に当該加算の施設基準届出を行っている医療機関は極めて限られています(資料1-2)。
 このままでは、精神保健福祉士を長期入院病棟に配置することで入院中の患者の早期退院を図るという当該加算の設置目的が果たせなくなります。
<有効性>
 2014年改定において新設された精神保健福祉士配置加算は、その目的にあるように、いわゆる慢性期病棟への精神保健福祉士の配置により、平均在院日数が短縮することを根拠とし、精神療養病棟入院料及び精神病棟入院基本料を算定する慢性期病棟におけるnew long stayを防止することに有効と考えられます。先述の具体的基準緩和により、有効性の実現が図られると考えます。

2 医療保護入院等診療料(区分I014)について、施設基準等を見直したうえで報酬額を改定してください。

<具体的要望内容>
 医療保護入院等診療料の施設基準等に、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、「精神保健福祉法」)に規定する医療保護入院者に対する退院後生活環境相談員の選任及び退院促進のための体制整備(医療保護入院者退院支援委員会の開催等)を追加し、報酬額を1,200点(1回)としてください。
<理由> 
 現行の医療保護入院等診療料は、精神保健指定医の配置と行動制限最小化委員会の設置及び活動等を施設基準としています。2014年度から施行された改正精神保健福祉法により、医療保護入院患者に対する退院後生活環境相談員の選任の義務付けや、医療保護入院患者退院支援委員会の開催及びそれらに付随する記録等の関連業務が定められました。 「法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」(※1)によれば、退院後生活環境相談員の8割は精神保健福祉士が担っており、書類作成業務、会議開催調整業務など1人の退院後生活環境相談員に係る業務量が増大していることから、当該相談員の適正配置が求められます。
(※1公益社団法人日本精神科病院協会「精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」平成27年3月、厚生労働省障害者総合福祉推進事業)
<有効性>
 退院後生活環境相談員を担う精神保健福祉士等が適正に配置されることで、丁寧な個別患者支援と精神保健福祉法の規定に基づく業務の遂行が可能となり、今般の法改正の趣旨である医療保護入院患者の早期退院が実現できると考えます。

3-1 精神科専門療法として精神科外来患者療養生活環境整備支援料(仮称)を新設してください。

<具体的要望内容>
 医師の包括的指示のもと、精神保健福祉士が外来患者またはその家族に対して療養生活環境整備支援(障害福祉サービスや生活保護・障害年金等の経済支援制度の利用に係る支援、家族支援、および住居確保に係る支援等を目的とした面接や同行等)を実施した場合に、週1回を限度として、精神科外来患者療養生活環境整備支援料を算定できるようにしてください。
<理由>
 2010年度の診療報酬改定において新設された「精神科継続外来支援・指導料」(区分I002―2)における療養生活環境整備支援に係る加算については、他の精神科専門療法と同一日に行う精神科継続外来支援・指導に係る費用が、他の精神科専門療法の所定点数に含まれるとされていることから、実際には多くの医療機関が当該支援を行っているものの、算定件数は低位に留まっています(資料2)。
 また、外来医療では、精神保健福祉士が面接や電話、訪問などの手段で、外来患者支援(受診・受療援助、心理・社会的サポート、アセスメントおよびケアマネジメント、家族支援、関係機関とのケア会議への出席等)について多くを担っています。しかし、ほとんどが報酬評価されていないのが実情です。
<有効性>
 精神障害者の地域移行の推進とともに、退院後の患者の地域定着(病状悪化および再入院の防止や他機関連携)に向けた地域精神医療の充実強化は必要不可欠です。
 また、新規の患者および家族にとっては、医療機関に外来患者に対応する精神保健福祉士がいることで、その相談支援を通じて福祉サービス等のさまざまな社会資源の活用に結びつく事例も多く、社会参加の促進に資するものと考えます。
 特に、精神障害者の地域生活維持のために近年重要な役割を果たし、今後ますます機能強化が求められる精神科診療所において、精神科デイ・ケア等を実施していないところでは精神保健福祉士の配置が進んでおりません。一方で、精神保健福祉士を配置している医療機関では、外来患者および家族、さらには関係機関との連携までを含め、提供されている支援は実に幅広く多種多様なものとなっています(資料2)。

3-2 精神科外来患者療養生活環境整備支援料(仮称)を新設したうえで、医療機関の職員がケア会議等に参加した際の加算(Ⅰ・Ⅱ)を創設してください。

<具体的要望内容>
 外来患者について、介護保険法や障害者総合支援法に係る居宅サービス等のケアプラン作成にあたり開催されるサービス調整会議に医療機関の精神保健福祉士等が出席し、当該患者の医療等に関する情報提供を行った場合に、加算(Ⅰ)を算定できるようにしてください。
 また、外来患者について、連携している関係機関(行政機関、障害福祉サービス事業者・介護保険事業者等)とのケア会議に医療機関の精神保健福祉士が出席した場合に、その都度加算(Ⅱ)を算定できるようにしてください。
<理由>
 精神障害者の地域移行や地域定着の推進とともに、外来患者に関する地域援助事業者等の関係機関との連携が増え、医療機関の精神保健福祉士に対する医療機関内外で行われるケア会議への参加要請が増えています(資料2)。しかし、会議には相当程度の時間を割く必要があるにもかかわらず財源措置や出席根拠の規定がありません。
<有効性>
 関係機関による連携を促進するための基盤が作られていくことで、今後、重要となる医療・福祉・介護等の各支援機関が連携し包括的な地域生活ケアの提供が推進されると考えます。

4 精神科救急入院料(区分A311)および精神科急性期治療病棟入院料(区分A312)の常勤精神保健福祉士の配置に係る施設基準を見直してください。

<具体的要望内容>
 精神科救急入院料の施設基準のうち、常勤の精神保健福祉士の数について、当該各病棟の入院患者の数が16またはその端数を増すごとに1人としてください。
 また、精神科急性期治療病棟入院料の施設基準として、当該各病棟に2名以上の常勤の精神保健福祉士の配置を求めます。
<理由>
 現行の施設基準では、精神科救急入院料を算定する各病棟に2名以上の常勤配置となっていますが、医師の数については入院患者に対して16対1以上、看護師の数については入院患者に対して常時10対1以上としていることに照らして、精神保健福祉士の数は入院患者に対して16対1以上とする規定を設けてください。
 全国の精神科救急入院料算定病棟の病床数を見ると、30床程度から60床まで幅広く、病床数の多い当該病棟では、患者に対する精神保健福祉士の個別業務の密度が低くなり、入院の長期化防止や円滑な退院支援に支障を来します。本協会が実施したサンプル調査によると、複数の医療機関で入院患者に対して16対1に近い精神保健福祉士の加配を行っています(資料3)。
 また、急性期治療病棟の施設基準については、当該各病棟に「精神保健福祉士又は臨床心理技術者が常勤している。」とされていますが、役割や実態に鑑みて現状にそぐわなくなってきていると考えます。
 入院に至った要因に関する患者本人、家族および地域関係者からの情報収集や調整、退院に向けた調整や関係機関との連携、福祉的手続き支援など、精神保健福祉士が担う多岐におよぶ業務を迅速かつ丁寧に行える環境が整うことにより、入院の長期化を防ぎ可能な限り短期での地域移行を推進することにつながると考えます。また、精神保健福祉士の専門性は、臨床心理技術者の専門性とは異なります。いずれかではなく各専門性を生かした多職種チームの配置が望ましいと考えます。

5 精神科訪問看護基本療養費(区分01‐2)における精神保健福祉士単独による指定訪問看護の評価を規定してください。

<具体的要望内容> 
 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年3月31日厚生省令第八十号)における人員に関する基準の「看護師等の員数」に、精神保健福祉士に関する規定を追加したうえで、精神科訪問看護基本療養費の算定対象となる指定訪問看護を行う職種として精神保健福祉士を加えてください。
<理由> 
 2012年度の診療報酬改定において、訪問看護療養費に精神科訪問看護基本療養費が新設され、訪問看護ステーションの保健師または看護師が、精神保健福祉士と同時に指定訪問看護を行った場合に、複数名精神科訪問看護加算を算定できることとなりました。しかしながら、精神保健福祉士は複数名精神科訪問看護加算以外の訪問看護療養費を算定できないことから、訪問看護ステーションにおける配置が進んでいないのが現状です。
 精神科専門療法である精神科訪問看護・指導料においては、保健師、看護師、作業療法士と同様に精神保健福祉士が、単独での訪問による看護および社会復帰指導を行った場合も算定が可能となっていることとの整合性を図るため、訪問看護療養費においても、精神保健福祉士が単独で指定訪問看護を行った場合の評価をする必要があると考えます(資料4)。
<有効性>
 精神保健福祉士の単独訪問の評価が可能となることにより、職種による役割分担が可能となり、地域生活支援の有効性が高まると考えます。

6 精神科退院前訪問指導料(区分I012)の算定対象に、精神保健福祉士や看護師等が配置されている精神障害者施設等への訪問を認めてください。

<具体的要望内容>
 宿泊型自立訓練事業所や障害者グループホーム等の精神障害者施設等で精神保健福祉士や看護師等が配置されている施設等への訪問をした場合も、精神科退院前訪問指導料の算定対象としてください。
<理由>
 精神科病院に入院中の患者が退院後の生活訓練や日中の活動先として利用する精神障害者施設等には、精神保健福祉士、看護師等の専門職が勤務している実態が多く見られます。入院患者の退院後の生活に関する意向や希望に沿った支援を行い、患者の障害状態を加味しながら新しい生活環境へつなげていくためには、精神障害者施設等の見学や利用手続き等に際して患者の状況を把握できている入院医療機関の職員が同行することが必要であると考えます。
<有効性>
 精神保健福祉士や看護師等が配置されている精神障害者施設等においても、医療機関チームとの連携を担う役割や視点が深められ、退院後の患者の地域定着の継続に資すると考えます。

7 精神科重症患者早期集中支援管理料(区分I016)の算定期間を見直してください。

<具体的要望内容>
 精神科重症患者早期集中支援管理料における算定期間の制限(現行は直近の退院日から起算して6月以内)を除外するとともに、算定対象となる患者の該当要件のうち「障害福祉サービスを利用していない者」を除外してください。
<理由>
 当該管理料は、2011年度から実施されてきた「精神障害者アウトリーチ推進事業」の実施状況を踏まえて、その一部が2014年度改定で新設されたものと認識しております。当該管理料の算定対象は、「長期入院患者又は入退院を繰り返し、病状が不安定な患者の退院後早期」とされていますが、重度の精神障害を有する者の中には、在宅等における生活の維持継続のために比較的長期にわたる集中的な支援を要する者もおり、一律に算定期間を6月以内に制限することは馴染まないと考えます。
 また、集中的な医療ケアと居宅介護や訪問による生活訓練といった障害福祉サービスを併せて利用することで在宅生活を維持できる者が現にいることから、これらの障害福祉サービスの併用は必要であると考えます。
<有効性>
 重度の精神障害を有する者の在宅等における生活の維持に資するものと考えます。

以上

資料1-1 精神科病院における1年以内社会復帰率PDF・350KB)
資料1-2 精神保健福祉士配置加算施設基準届出状況等PDF・230KB)
資料2 精神保健福祉士による外来業務に係る調査結果PDF・620KB)
資料3 精神科救急入院料算定病棟における精神保健福祉士の業務等に係る調査結果PDF・405KB)
資料4 精神科医療機関における精神保健福祉士の訪問業務に係る調査結果PDF・530KB)

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標題 障害福祉サービスの在り方等に関する意見書
日付 2015年6月9日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠
提出先 社会保障審議会障害者部会(第64回)関係団体ヒアリング


 障害者総合支援法の見直しにあたり、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、各検討項目で示された論点に沿って以下の通り意見を申し上げます。 


Ⅰ 常時介護を要する障害者等に対する支援について

【論点】どのような人が「常時介護を要する障害者」であると考えられるか。
 精神障害者の場合、「常時介護を要する」者は少ないものの、身体的な直接介護だけでなく、常時の見守りや服薬の指導等といった「常時の支援」があれば地域生活が可能となる長期入院者等は多く存在しており、「常時支援を要する障害者」のための包括的な支援サービスの創設が望まれる。

【論点】「常時介護を要する障害者」のニーズのうち、現行のサービスでは何が不足しており、どのように対応すべきか。
 上記の精神障害者まで対象を拡大する場合は、身体介護、家事援助、移動介護の組み合わせ以外にも、見守りや精神科訪問看護等による服薬指導等の医療的ケアを並行的に導入する必要がある。

Ⅲ 障害者の就労支援について

【論点】就労継続支援(A型及びB型)、就労移行支援の機能やそこでの支援のあり方についてどう考えるか。

○就労支援の全般的状況

  • 障害者雇用が進展する中、就労移行支援の利用者確保が難しくなり、就労継続支援においては作業性の高い利用者の減少や高齢化が問題となってくる。このため、一般就労させないことのほうが事業経営上メリットがあると考える事業所が出てくる可能性がある。
  • 就労継続支援B型での工賃向上への取り組みを過剰に推進することは、作業能力の低い利用者の利用拒否が起きる危険性がある。
  • 就労継続支援A型については特定就職困難者雇用開発助成金(特開金)を悪用している事例が散見されるものの、有効活用して職員の過配や設備投資等に充てるなどすることで工賃向上や8時間雇用、最低賃金の維持への努力をしている事業所も多くあり、一律の規制は馴染まない。また、報酬減算の仕組みが変わったことで、「短時間であれば無理なく働ける」精神障害者の利用を断る事業所が出てくる可能性がある。

 以上のような状況から、「障害福祉サービス」としての就労支援のあり方については、根本的に再検討する時期に来ていると考える。
就労継続支援A型事業所及び就労移行支援事業所については、必ずしも良質な障害福祉サービスとして支援が提供されていない事業所もあることから、(自立支援)協議会等による第三者評価の仕組みを導入する必要がある。
 また、障害者就業・生活支援センターとの機能の棲み分けの問題はあるにしても、就労支援には相談機能も含めた「生活支援」が欠かせないことからも、人員体制や加算についても見直しが必要である。
 精神障害者に特化した課題としては、障害者の雇用施策と同様に精神障害者を重度加算の対象とすることや、報酬体系(基本報酬と加算・減算のあり方)の根本的な見直しが必要である。

【論点】就労定着に向けた支援体制についてどう考えるか。

 精神障害者の職場定着支援は、その病気の揺れや対人関係の不得手さからより多くの期間を要する場合があり、その支援内容は日常生活全般に関する相談支援や制度の利用についての支援まで多岐にわたる。一方で、就労して6か月以降の支援は障害者就業・生活支援センターが担うこととされているが、同センターは広域支援機関でありマンパワーの不足が否めず、地域の状況(移動距離など)によっては十分な対応が難しい場合がある。
 これらのことから、より職場定着率を上げるために、利用者との関係性が十分に取れている就労支援事業所が職場定着支援を行いやすい体制(定着支援としている対象者の就労移行支援欠員分の保障等)を検討し、継続的な伴走型支援が制度に位置づけられる必要がある。
 また、職場における合理的配慮の提供のために、精神障害の特性に関する理解を深めさせることと、そのうえで必要な配慮を提供できるための雇用側への何らかの支援策(金銭面や専門職による助言を受けられる等)を講じる必要がある。

Ⅳ 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について

【論点】支給決定プロセスの在り方をどう考えるか。

【論点】障害支援区分の意義・必要性・役割についてどう考えるか。

 支給決定プロセスにおいて、現行の審査会による障害支援区分認定に基づく支給決定というプロセスは廃止すべきである。
 障害者が自ら望む暮らしを実現するために、相談支援専門員が障害者本人のニーズを的確にアセスメントしたうえで、本人の意向を最大限取り入れたサービス等利用計画案を作成し、自治体担当者との協議・調整により支給決定を行うプロセスに転換する必要がある。支給決定プロセスを転換するにあたっては、自治体によるパイロットスタディを行い、事例収集・分析に基づく「支給決定基準ガイドライン」を開発すべきである。
 また、計画相談支援は相談支援専門員の独占的業務とされているものの、相談支援専門員の要件となる実務経験は幅広く認められており、ケアマネジメントのプロセスを担ううえで質の担保が危ぶまれる。このため相談支援専門員の基礎資格は、ソーシャルワーカーの国家資格である精神保健福祉士または社会福祉士を原則とすべきである。

Ⅴ 障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について

【論点】成年後見制度の利用支援についてどう考えるか。

 成年後見制度利用支援事業は市町村地域生活支援事業の必須事業となっているが、後見人等の報酬等必要となる経費に対する補助の対象を市町村長申立てに限定している自治体も多い。市町村長申立て以外でも資産をほとんど持たない被後見人は多く、経費補助の対象を広げて運用できるようにするべきである。
また、成年後見制度の利用を促進する前提として、我が国の成年後見制度のあり様について、障害者権利条約に照らして妥当かどうか再検討し、必要な見直しを行うことが必要と考える。

Ⅶ 精神障害者に対する支援の在り方について

【論点】病院から地域に移行するために必要なサービスをどう考えるか。

 長期入院中の精神障害者の地域移行を促進していくために、相談支援専門員やピアサポーターによる地域移行支援は重要であり、平成27年度障害福祉サービス等報酬改定においても、初回加算の新設や障害福祉サービスの体験利用加算や体験宿泊加算の算定要件の見直しがなされたところではあるが、利用者数は極めて低位にとどまっている。
 長期入院精神障害者の高齢化が進む中、地域移行支援の量的拡充は喫緊の課題であり、ピアサポーターの養成、精神科病院の職員に対する地域移行に関する研修の義務化、精神保健福祉法上の地域援助事業者の活動に係る財源の確保、(自立支援)協議会における地域移行部会等の設置と精神科病院からの参加の義務づけ等、必要な手立てを講じていく必要がある。
 また、地域移行支援を推進していくためには、その前提として(自立支援)協議会を活用して、一般的な相談、基幹相談支援センター、計画相談支援、地域相談支援を含めた相談支援体制を早急に整えることが重要である。

【論点】精神障害者の特徴に応じた地域生活支援の在り方についてどう考えるか。

 常時介護を要しないものの、精神障害の可変性や不安定性を有するという特徴に鑑みて、状態像の変化によっては集中的な見守りや助言指導、緊急時の支援等が必要な精神障害者は多く、介護保険サービスにおける「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を参考としつつ、精神障害者の特性に合わせた医療と介護(福祉)の連携による新たな包括的支援サービスを創設すべきである。
 また、居住の場の確保に向けて、一部の自治体で取り組みが始まっている空き家・空きビルの障害者グループホームへの転用に対する補助等の制度化について検討すべきである。
さらに以下のようなサービスの見直し及び創設が必要と考える。
  • 通所とは切り離した独立した訪問型自立訓練(機能訓練・生活訓練)の創設
  • 小規模多機能居宅介護の創設
  • 重厚な相談支援を含む地域定着支援Ⅱの創設(市町村の責務として行う「一般的な相談」の一部個別給付化)
  • 入院中の「重度かつ慢性」の精神障害者の退院を推進するための宿泊型自立訓練の強化
  • 医療型短期入所の機能の見直し(従来の精神科病院への「休息入院」機能の追加)

【論点】総合支援法における意思決定支援と、精神保健福祉法附則第8条に規定する「精神科病院に係る入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援の在り方」との関係性についてどう整理するか。

 「精神科病院に係る入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援」は、精神科病院への非自発的入院という特殊な状況下における本人の権利擁護や権利行使支援を主目的とするものであり、総合支援法におけるそれとは区別して考えることが望ましい。

Ⅷ 高齢の障害者に対する支援の在り方について

【論点】障害福祉サービスの利用者が介護保険サービスへ移行する際の利用者負担について、どう考えるか。

 介護保険サービスに移行することで生ずる利用料の自己負担を支払えないことを理由に、サービス利用を諦めてしまうことのないよう、低所得者等への何等かの経済的措置を講ずるべきである。

【論点】介護保険サービス事業所において、65歳以降の障害者が円滑に適切な支援が受けられるようにするため、どのような対応が考えられるか。

 介護保険サービス事業所においては、精神障害の特性等に関する十分な知識がないまま精神障害者の対応に苦慮していたり、高齢精神障害者の受け入れを躊躇したりといった現状がある。今後、高齢となった精神障害者の地域移行先やサービス利用の選択肢となりうる介護保険サービス事業所に対して、適切な支援を行うための研修の義務づけ等を行っていく必要がある。
 また、65歳前から障害福祉サービス事業者が介護保険サービス事業所と連携し、適切な支援が途切れず提供されるようにケア会議等の場を共有し引き継ぎを行う体制を行政主導で行うべきである。

【論点】心身機能が低下した高齢障害者について、障害福祉サービス事業所で十分なケアが行えなくなっていることについて、どのような対応が考えられるか。

 障害者グループホームを利用しながら日中は通所系の介護保険サービスを利用できるなど、障害福祉サービスと介護保険サービスを柔軟に併用できることが必要である。

Ⅹ その他の障害福祉サービスの在り方等について

【論点】都道府県及び市町村が作成する障害福祉計画をより実効性の高いものとするため、どのような方策が有効か。

 市町村障害福祉計画の策定においては、委託を受けたコンサルティング会社が素案を作成し、関係機関で構成される策定のための作業部会はその承認作業のみに終始することが多く、内容が形骸化しやすいと言える。
 計画の策定にあたっては、少なくとも現状ニーズの分析のためのアンケート調査や関係団体へのヒアリングを必須とし、その結果を作業部会で精査していくというプロセスが必要である。また、計画が策定されると作業部会の役割を終えるものが多いが、計画の進捗状況をモニタリングし推進させる機能を作業部会に持たせることも有効な手立てと言える。
 障害福祉計画は個別給付サービスの数値目標を立てることが主となる訳だが、満たされないニーズを明確にキャッチし、数値目標にかかげ、その達成のための方策を継続的に協議するために、その作業部会の機能を(自立支援)協議会の機能にリンクさせることが有効であると考える。
 また、都道府県および市町村が障害者福祉計画を策定するにあたり、国の基本指針として「入院中の精神障害者の地域生活への移行」の目標値が示されるが、市町村にとっては、入院者数や入院期間等を正確に把握する術を持たないことが課題となる。机上の数字ではなく実態を伴う数値を把握できる仕組みを作るとともに、目標達成に向けた具体的な取組みまでを計画する必要がある。
 さらに、すべての都道府県及び市町村の障害福祉計画を厚生労働省のウェブサイトで閲覧可能とすることで、他の自治体が優れた計画を参考にできる。また、その計画遂行率も年間ランキング等にして公表することで優れた取組みの自治体を視察にいくこともできる。

以上

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