標題 | 「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」の抜本修正を求める声明 |
日付 | 2014年3月13日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
厚生労働省は、本年2月27日、「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」(以下、「省令案」という。)の概要を発表し、3月28日を期限としてパブリックコメントを募集している。これは、昨年12月に成立した「生活保護法の一部を改正する法律」(以下、「改正生活保護法」という。)について、本年7月からの本格施行を前に行われる規則改正に関するものである。 改正生活保護法については、申請手続の厳格化等によって、いわゆる「水際作戦」を合法化するとの批判や懸念が各方面からあがり、国会審議においては、これらの批判や懸念を解消する方向での法文修正、答弁、附帯決議などがなされたところである。しかしながら、省令案は、以下の諸点において、これらの法文修正等の意義を没却する看過し難い内容を含んでおり、生活保護申請時の窓口対応によって不幸な結果に至った数々の事案が過去発生していることに鑑みても、到底容認できない。 第1に、改正生活保護法第24条第1項は、従来、口頭でも良いとされていた申請について申請書の提出を必須とするように読める内容であったため批判を招いた。そこで、申請行為と申請書の提出行為が別であることを明確にする法文修正が行われ、参議院厚生労働委員会附帯決議でも「申請行為は非要式行為であり、・・・口頭で申請することも認められるというこれまでの取扱い・・・に今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」とされたのである。 ところが、省令案は、「保護の開始の申請等は、申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする」として、修正前の法文とほぼ同内容の表現に戻されており、原則として口頭申請は認められないという誤解を招く内容となっている。 また、省令案は、「ただし、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではない」として、口頭申請が認められる場合が身体障害等の場合に限定されるように読める内容となっており、現行の運用指針(生活保護手帳別冊問答集問9−1「口頭による保護申請について」)よりも後退している。 さらに、改正第24条第1項ただし書は、単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに、省令案は、「保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は」として、特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねる表現へと後退している。 第2に、改正生活保護法第24条第2項は、従来、保護決定までの間に可能な範囲で行えばよいとされていた要否判定に必要な書類の提出について、申請書にすべて添付しなければならないように読める内容であったため批判を招いた。そこで、これまでの取扱いに変更がないことを明確にするためにただし書を設けるという法文修正が行われ、国会答弁を踏まえて前記附帯決議でも「要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いに今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」とされた。しかし、省令案には、この点に関する記述が一切存在せず、国会答弁や附帯決議に反している。 第3に、改正生活保護法では、扶養義務者に対する通知義務を定めた第24条第8項、扶養義務者に対して報告を求めることができるという第28条が新設されたが、扶養義務者に対する扶養の要求が強められ、事実上扶養できないことが保護の前提条件とされるのではないかとの批判を招いた。これに対し、厚生労働省の会議資料や国会答弁では、「福祉事務所が家庭裁判所を活用した費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる極めて限定的な場合に限ることにし、その旨厚生労働省令で明記する予定である」と繰り返し説明されていた。ところが、省令案では、原則として通知や報告要求を行うが、「保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第77条第1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合」等に例外的に通知等を行わないものとしている。これは、原則と例外を完全に逆転させるものであって、背信的とさえ言える。 以上のとおり、本省令案には、重大な問題が多々含まれており、生活保護を必要とする市民をいたずらに萎縮させ日本国憲法第25条で保障されている生存権を脅かしかねない。生活困窮者の支援に取り組む専門実務家団体として、当会は、本省令案の内容を到底容認できず、上記の国会答弁や附帯決議等を真摯に反映させた内容に抜本的に修正することを求めるものである。 |
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【PDF版】 「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」の抜本修正を求める声明(163KB) |
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標題 | 介護保険制度の見直しに係る要望書 |
日付 | 2014年1月9日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
提出先 | 厚生労働省 老健局長 原 勝則 様 |
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記 | |
≪要望事項≫ 地域包括支援センター(以下、「センター」という。)の人員体制を見直すにあたっては、機能強化の観点から精神保健福祉士も配置できる規定としてください。また、基幹となるセンターや機能強化型のセンターを法的に位置付ける際には精神保健福祉士を必置としてください。 ≪理由≫ 1.今後急増する認知症を含む高齢精神障害者等への対応には、精神保健医療福祉との連携支援が不可欠です。 介護保険部会の意見は、センターに対する人員体制を業務量に応じて適切に配置することが必要であること、「在宅医療・介護連携の推進」、「認知症施策の推進」等を図る中で、それぞれのセンターの役割に応じた人員体制の強化等を図る必要があることを指摘しています。 特に、増え続ける認知症施策の充実強化や精神科病院に入院中の高齢精神障害者の地域移行を推進していくに当たっては、精神科医療機関をはじめとする精神保健医療福祉との連携の強化が欠かせなくなります。 このことは12月18日に公表された「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針案」(社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課)において、関係行政機関等の中で市町村の役割に「障害福祉サービスや介護サービスの必要な提供体制を確保するとともに、地域包括支援センターで高齢者の相談に対応するなど、これらのサービスの利用に関する相談に対応する。」との記載があるようにセンターが重要な資源として求められていることが確認できます。 2.地域づくりのコーディネートにはソーシャルワークの専門性が求められます。 今後は、市町村による新しい地域づくりの推進において、生活支援サービスを担う事業主体の支援体制の充実・強化のためにコーディネーターの配置が計画されているところです。コーディネート業務には、個別支援に関するアセスメントやニーズ把握などのミクロレベルから、地域診断に基づく公私の資源開拓や創設、連携や協働、地域の支援基盤の整備に関する計画、立案、モニタリングなどのマクロレベルの技術的支援が行えることなど、ソーシャルワークの専門性が求められることから、精神保健福祉士等ソーシャルワーカーが有効です。精神保健福祉士は精神障害者の地域移行に関して地域体制整備を担う経験などを有してきています。 3.精神保健福祉士の活用は以下の点で有効です。 精神保健福祉士は、精神保健医療福祉分野のソーシャルワーカーとして、生活支援の立場や視点に専門性を持ち、医療チームの中にあっては他職種と連携しながら、時に判断能力の困難を抱える方の自己決定や権利擁護支援に携わり、実績と研鑽を積み重ねてきました。 また、精神保健福祉士の養成カリキュラムにおいては、精神保健福祉士に求められる役割(治療中の精神障害者に対する相談援助、地域移行の支援、地域生活の維持・継続の支援、関連分野における精神保健福祉の多様化する課題に対し、相談援助を行う役割)を十分に発揮できるよう教育をする観点から、精神科病院等の医療機関における実習を必須としていることからも、今後ますます期待される介護と医療との連携において、その役割を果たせる専門職であると言えます。 この間「市町村認知症施策総合推進事業」における認知症地域支援推進員の対象職種や認知症初期集中支援チームの配置職種として精神保健福祉士が含まれていることに関しても、認知症施策の推進等に精神保健福祉士が寄与できる職種として評価されてのことと認識しております。 なお、本協会の構成員においても、精神保健や精神障害者の福祉に関する専門性発揮の必要性から、100名を超える精神保健福祉士がセンターで勤務している実態がありますが、そのほとんどは社会福祉士の資格も有する者として従事しています。センターの配置職種に精神保健福祉士が加わることで、多様な機能が求められるセンターの充実強化を図ることが可能となると考えます。 |
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以上 | |
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標題 | 改正精神保健福祉法の施行事項に関する意見・要望 |
日付 | 2013年11月25日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
提出先 | 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 蒲原 基道 様 精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針等に関する検討会 座長 樋口 輝彦 様 |
■提案(意見および要望)■ 1.退院後生活環境相談員(新33条の4) 1)退院後生活環境相談員となる者の資格について 2)配置・業務について 2.地域援助事業者(新33条の5) 1)市町村の関与の必要性について 3.医療保護入院者退院支援委員会(新33条の6) 1)対象者について 2)メンバー構成について 4.書式や様式について(新33条の6) 1)定期病状報告書について 2)医療保護入院者等退院支援委員会記録について ■補完説明資料■ 1.退院後生活環境相談員(新33条の4) [意見] [理由] 2)配置・業務について [意見] [理由] ○2011年6月30日現在の医療保護入院者数133,096人[630調査] (2)退院後生活環境相談員の配置基準を30対1とした場合、「精神科救急入院料」「精神科救急・合併症入院料」を算定する病棟では、医療保護入院者の割合が高いものの、施設 基準に2人以上の精神保健福祉士の配置規定があるため、当該病棟配置の精神保健福祉士が退院後生活環境相談員を担うことで特に支障はないと考える。それ以外の病棟では、50床に対して1人以上の精神保健福祉士を配置しないと、退院後生活環境相談員としての業務を円滑に遂行することが困難となる。このため、精神保健福祉士の配置に係る診療報酬上の評価を新設することが求められる。 (3)日本精神保健福祉士協会は現在「精神保健福祉士業務指針」の改訂作業(第2版)を行って おり、精神保健福祉士の個別支援業務を以下の通り分類する予定としている。 (4)現在も既に退院支援に携わるスタッフがいるが、退院後生活環境相談員の業務の明確化と医療保護入院者退院支援委員会の開催や運営に関するコーディネーター役の明確化により、責任の所在や業務および役割分担の不明瞭化を防ぐことが可能となる。あわせて、退院後生活環境相談員が業務を遂行するうえで資質向上への意欲喚起にもつながると考える。 (5)医療保護入院者の早期退院支援の取り組みを、一定の水準を保ちながら全国でくまなく展開するために、また制度の形骸化を防ぐためにも、実務レベルでの退院後生活環境相談員の質の担保が欠かせない。このため、退院後生活環境相談員として選任候補者には、研修の受講を要件化することが必要と考える。 2.地域援助事業者(新33条の5) 1)市町村の関与の必要性について [意見] [理由] 2)紹介の方法について [意見] [理由] 3.医療保護入院者退院支援委員会(新33条の6) 1)対象者について [意見] [理由] 2)メンバー構成について [意見] [理由] 4.書式や様式について(新33条の6) 1)定期病状報告書について [意見] [理由] 2)医療保護入院者等退院支援委員会記録について [意見] [理由] 以上 |
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標題 | 生活保護法の一部を改正する法律案に反対するソーシャルワーカー2団体及びソーシャルワーカー養成2団体声明 |
日付 | 2013年10月29日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 佐原 まち子 社団法人日本社会福祉士養成校協会 会長 長谷川 匡俊 一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会 会長 石川 到覚 |
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1.保護開始における申請書類の提出義務を法に規定することは申請権の侵害につながる。 改正案では、これまで生活保護法施行規則(省令)で定めてきた保護の申請手続きを法律本体で規定している。さらに、申請書の記載事項に、新たに「要保護者の資産及び収入の状況」を加え、必要な書類の提出についても「求めることができる」規定から義務規定に変わっている。 報道等によると、厚生労働省は「申請手続きの現在の運用は変更しない」と説明しているが、現行施行規則にはない事項の追加と書類提出の義務づけをしたうえで、法律本体に申請手続きを厳密化して規定することは、「水際作戦」が現に行われている自治体の恣意的な運用を助長することを危惧するものである。 また、申請手続きの厳密化は、無差別平等の原理を謳う生活保護法の理念に反し、保護を必要とする人を窓口段階で排除することにつながりかねない。ただでさえ捕捉率が極めて低い我が国の現状と照らして、生活保護制度をさらに「入りにくい制度」とすることは、憲法が保障する国民の生存権を著しく脅かすものである。 |
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2.現状にそぐわない扶養義務の強化は公的責任の後退に他ならない。 改正案には、福祉事務所による@扶養義務を履行していないと認められる扶養義務者に対する書面通知、A調査の一貫としての扶養義務者等に対する報告請求、B要保護者または被保護者であった者の扶養義務者に関する銀行、信託会社、雇主等に対する報告請求、の3点が新たに規定されている。 少子高齢化の進展や社会構造の変化に伴い、家族形態や機能も変化し、いまや3人に1人が単独世帯となり、非正規雇用が全体の3分の1を占め相対的貧困率も上昇している現状は、扶養義務が事実上機能しなくなっていることを示している。 このような現状において社会保障の根幹をなす法制度に扶養義務が殊更持ち出されることは、家族の機能不全や崩壊に拍車をかけるばかりではなく、生活保護の受給抑制をもたらし、現行制度ですら起きていた孤独死、餓死、自死などの悲惨なケースの増加を招く危険性がある。このことは、すなわち国民を守るべき国がその責任を放棄することに他ならない。 |
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標題 | 「精神障害者雇用トータルサポーター」に係るお願い |
日付 | 2013年8月9日 |
発翰 番号 |
JAPSW発第13-159号 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
提出先 | 厚生労働省 職業安定局 高齢・障害者雇用対策部 障害者雇用対策課長 山田 雅彦 様 |
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【要望事項】 | |
1.精神障害者雇用トータルサポーターの人員増を求めます。 各ハローワークに配置する「精神障害者雇用トータルサポーター」の人員を増強するとともに、常勤雇用化もしくは最低でも週3日を勤務条件として、安定した雇用の確保を図ってください。 2.精神障害者の就労支援に従事する人材の確保について、以下の措置を求めます。 1)長期的な視野に立った、専門的人材の育成と専門職の積極的な活用および配置(研修等の体制構築と予算措置) 2)障害者就業・生活支援センターにおける就業支援担当者等の適正な人員の確保(障害者総合支援法に準じた人員に関する基準の設定) 3)「精神障害者雇用トータルサポーター」に関する機関内での普及啓発および労働環境の改善 |
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【理由】 | |
今般、精神保健福祉法も一部改正され、今後ますます精神障害者の地域移行および地域定着支援の充実が図られ、精神障害者の雇用も含む社会参加の推進につながるものと考えております。
この間、障害者総合支援法における就労支援および障害者雇用促進法における精神障害者への雇用施策の充実により、特に精神障害者の新規求職件数および就職件数は大きく伸びています。特に、平成23年度からハローワークに配置されている「精神障害者雇用トータルサポーター」(以下、「トータルサポーター」という。)による支援効果は大きく、同年度にトータルサポーターの支援を終了し、就職等次のステップへ移行した者の割合が77.5%という実績を残したことから、平成25年度においても予算増が図られました。障害者雇用促進法の改正により、今後、精神障害者も雇用義務の算定対象に位置付けられることとなり、トータルサポーターをはじめとする就労や雇用の支援を担う専門的人材の重要性は高まります。 しかし、トータルサポーターは、有期雇用契約の非常勤で勤務日数も週1〜2日が多く、総合的継続的支援には遠い現状があります。また、法定福利も適用されず、公用車の使用制限や通信手段の制約があることや、ハローワーク等の他の職員への周知が十分でないが故の活用度の低さも相まって、トータルサポーターが求められる 役割を十分に果たせる労働環境にはないと言えます。 |
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標題 | 障害のある人の暮らしの権利保障のために、改めて訴える〜健康で文化的な最低生活を保障する生活保護制度の構築を!〜 |
日付 | 2013年7月22日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
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1.スティグマを解消するべく国民への普及啓発を! 深刻化する日本の貧困は、戦後最大級といわれる210万人が生活保護を利用する状況となっている。昨年来からの事実や法的理解に欠ける不正受給報道による一連の生活保護バッシングはこの状況を背景としている。この動きの大きな問題は、国民の生活保護制度への不信感を植え付けただけでなく、生活保護を受給することが恥であり、税金の無駄遣いをしているかのようなイメージを強化したことにある。今なお生活保護が権利ではなく、恥ずべきものであるというスティグマが報道も一般社会も支配していたことに愕然とせざるをえない。 また国も社会保障費の増大を受け、貧困問題の原因を矮小化し、生活保護制度をスケープゴートにして改正に乗り出したと言えよう。政府は社会保障審議会生活保護基準部会の報告書の一部を取り上げ、生活扶助基準の引き下げを織り込んだ予算案を閣議決定した。さらに、予算成立後の2013年5月17日には、申請抑制につながる危惧の強い生活保護法改正案を閣議決定した。 国とともに地方の動きも剣呑である。2013年3月27日、兵庫県小野市は、生活保護費や児童扶養手当をパチンコなどのギャンブルで浪費することを禁止し、市民に情報提供を求める「市福祉給付制度適正化条例」(以下、「条例」)案を市議会本会議で可決成立させ、4月1日から施行している。本条例は生活保護受給者の生活実態を市民に監視・通報させようとするものであり、本協会は、条例の内容に反対する立場から、条例の撤回と廃案に向けて特定非営利活動法人神戸の冬を支える会が提出する要望書に賛同した。当該条例制定は、基本的人権の尊重を謳うこの国のあり様に大きな不安を抱かせるものである。 憲法第25条は誰もが健康で文化的な生活を送る権利を明記している。しかるに今、この国ではすべての国民がこの権利を行使し、最低限度の生活を享受できているとは言い難い状況にある。国には、生きにくい世の中に病気や失業や生活の不安と隣り合わせて生きている人にこそ、生存権を保障する義務がある。生活保護はまさに生存権保障の最後の砦であり、権利であることを我々ソーシャルワーカーは声を大にして、国や行政や報道関係者や一般市民に訴えていく必要がある。スティグマの解消に向けて有効な運動を展開することはソーシャルワーカーの責務である。 |
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2.社会権規約に照らした生活保護制度の構築を! 奇しくも政府が生活保護法改正案を閣議決定した2013年5月17日に、国連の社会権規約委員会は日本の第3回定期報告に関する最終見解を採択している。その中で委員会は、日本に対して公的な福祉的給付の申請手続きを簡素にするため、及び申請者が尊厳を持って取り扱われることを確保するための措置を講じることを要求し、公的な福祉的給付に付随したスティグマをなくす観点から国民を教育することを勧告している。 生活扶助基準の引き下げは、委員会が指摘する「社会保障に対する権利に関連してとられた後退的な措置(※)」を意味し、締約国である我が国は社会権規約に違反する疑いがある。また、今回廃案となった生活保護法改正案は、生活保護の申請手続きの簡素化や申請者の尊厳の確保といった委員会の要求に逆行した申請しにくい制度とし、申請に伴う扶養照会の厳密化が申請者の尊厳を著しく傷つける内容となっている。 社会保障を基本的人権の一つとして位置付けている国際人権A規約(社会権規約)に照らし、国は改正案の再検討をするべきである。(第9条「この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」)。 |
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3.引き下げによる悪影響や申請抑制の防止に、精神保健福祉士を始めとするソーシャルワーカーは全力で支援を! 精神保健福祉士が現場で出会う多くの精神障害者は、所得保障制度の未整備から社会参加に多大な制約を受けており、その中で文字通りセーフティネットとして生活保護制度が機能している。生活保護法改正に先んじて、本年8月からの基準引き下げにより多くの受給者の生活に影響がでることは必至であるが、精神障害者に対しては、その暮らしを守り、生活破綻が生じないように、しっかりした現場実践を展開する必要がある。精神障害者が健康で文化的な最低限度の生活の維持ができているかどうかを確認し、また、不当な受理却下が起こらないように、必要に応じて申請に付き添うなどのきめ細やかな支援を行う必要がある。制度課題や問題点の指摘及び改善要求などのソーシャルアクションと併せて、目の前のクライエントへの生活支援の役割を果たすことは権利擁護に携わる専門職としての精神保健福祉士である我々の使命である。 2013年6月14日に政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)には、財政健全化への取組方針として「社会保障支出についても聖域とはせず、見直しに取り組む」ことが盛り込まれている。生活保護制度においては、既に老齢加算や母子加算が廃止されており、生存権訴訟も起きている(母子加算はその後復活)。また、精神障害を事由とする障害年金の等級変更が全国的に散見され、今後の社会保障制度の見直しにおいて生活保護制度の障害者加算の見直しが懸念される。そのような事態は断固阻止しなければならない。精神障害者一人ひとりの暮らしへの影響が深刻化することのないよう、私たちは真摯な日常の実践とともに英知を結集した運動を展開することが求められている。 |
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(※)社会権規約委員会は、2007年11月23日に一般的意見第19「社会保障に対する権利(第9条)」を採択している。以下、抜粋。 V 締約国の義務 A.一般的な法的義務 42.社会保障に対する権利に関連してとられた後退的な措置は、規約に基づいて禁じられているとの強い推定が働く。いかなる意図的な後退的措置がとられる場合にも、締約国は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、及び締約国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関連によってそれが正当化されること、を証明する責任を負う。委員会は、(a)行為を正当化する理由があるか否か、(b)選択肢が包括的に検討されたか否か、(c)提案されている措置及び選択肢を検討する際に、影響を受ける集団の真の意味での参加があったか否か、(d)措置が直接的又は間接的に差別的であったか否か、(e)措置が、社会保障に対する権利の実現に持続的な影響力を及ぼすか、既得の社会保障権に不合理な影響を及ぼすか、もしくは個人又は集団が社会保障の最低限不可欠なレベルへのアクセスを奪われているか否か、(f)国家レベルで措置の独立した再検討がなされているか、を注視することになる。 |
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標題 | 2014年度診療報酬改定に関する要望について |
日付 | 2013年6月26日 |
発翰 番号 |
1)JAPSW発第13-108号の1 2)JAPSW発第13-108号の2 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
提出先 | 1)厚生労働省 保険局 医療課長 宇都宮 啓 様 2)厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課長 重藤 和弘 様 |
記 1.1年以上在院患者の地域移行を評価する精神科地域移行実施加算2の新設をしてください。また、その際の施設基準として50床に精神保健福祉士1名以上の配置を追加してください(別紙参照)。 2.1年未満在院患者の退院率(残存率)を評価する精神病棟入院基本料初期加算2を新設してください。その際の施設基準として50床に精神保健福祉士1名以上の配置を規定してください(別紙参照)。 3.精神科継続外来支援・指導料における療養生活環境整備支援加算を単独で評価できるよう療養生活環境整備支援料(仮称)として新設してください。 4.精神科訪問看護基本療養費における精神保健福祉士単独による指定訪問看護の評価を規定してください。 5.「介護支援連携指導料」は、精神療養病棟及び認知症治療病棟においても算定可能とするとともに、算定の対象職種として精神保健福祉士を明記してください。 以下は、今般の精神保健福祉法改正事項に鑑み、要望するものです。 6.「精神科生活環境アセスメント料」(仮称)を設けてください。 7.「精神科地域移行支援連携指導料(仮称)」を新設してください。 8.「精神科在宅時医学総合管理料(仮称)」を新設してください。 9.「精神科地域定着連携指導料(仮称)」を新設してください。 10.「精神科在宅患者家族支援加算(仮称)」を新設してください。 以上 |
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別紙1:要望項目に関する参考資料(PDF/930KB) 別紙2:次回診療報酬改定にむけて 地域移行実施加算U 初期加算Uの要望根拠について(PDF/2MB/会員ページ) |
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標題 | 東京地方裁判所判決への政府控訴の取り下げを求める! 〜成年被後見人の選挙権を認める公職選挙法改正後も控訴を続ける政府に抗議する〜 |
日付 | 2013年6月12日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
本協会は本年3月28日付けの抗議声明において、政府が東京地方裁判所の成年被後見人の選挙権を認めないことを違憲とする判決(以下「違憲判決」)に対して控訴したことに対する抗議と、公職選挙法の改正を強く求めてきたところである。 しかしながら、政府は全会一致での法改正であったにも関わらず東京高等裁判所への控訴を取り下げない方針を示している。本協会はこのことに対して強く抗議し、直ちに控訴を取り下げることを改めて求めるものである。 以上 |
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標題 | 生活保護法の一部を改正する法律案に関する見解 |
日付 | 2013年5月24日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
5月17日、政府は生活保護法の一部改正する法律案(以下、「改正案」という。)を閣議決定した。本協会は、社会福祉を基礎とする専門職団体の立場から以下の2点の理由において改正案に反対を表明する。 1.保護開始における申請書類の提出義務を法に規定することは申請権の侵害につながる。 改正案には、福祉事務所による@扶養義務を履行していないと認められる扶養義務者に対する書面通知、A調査の一貫としての扶養義務者等に対する報告請求、B要保護者または被保護者であった者の扶養義務者に関する銀行、信託会社、雇主等に対する報告請求、の3点が新たに規定されている。 少子高齢化の進展や社会構造の変化に伴い、家族形態や機能も変化し、いまや3人に1人が単独世帯となり、非正規雇用が全体の3分の1を占め相対的貧困率も上昇している現状は、扶養義務が事実上機能しなくなっていることを示している。 このような現状において社会保障の根幹をなす法制度に扶養義務が殊更持ち出されることは、家族の機能不全や崩壊に拍車をかけるばかりではなく、生活保護の受給抑制をもたらし、現行制度ですら起きていた孤独死、餓死、自死などの悲惨なケースの増加を招く危険性がある。このことは、すなわち国民を守るべき国がその責任を放棄することに他ならない。 以上 |
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標題 | 精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案への見解 |
日付 | 2013年5月22日 |
発信者 | 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木 一惠 |
本年4月19日、精神保健及び精神障害者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下、本法案)が閣議決定され、国会に上程された。本協会は、精神障害者の権利擁護と社会的復権を推進する立場から、法改正に向けて2012年10月29日付で「新たな入院制度に関する本協会の見解」を公表し、本年1月23日には厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課課長宛てに、「精神保健福祉法改正に関する要望書」を提出してきた。 本協会および当事者・関係者団体が長年悲願し強く要望してきた「保護者」制度の全廃については、「保護者」規定を法文から削除したものの、医療保護入院制度の手続き要件において3親等以内の家族等のいずれかの者の同意を要件として残すとなった。これは、従前に見直しが必要な一課題として認識されていた家族内葛藤や負担軽減にならないばかりか、臨床現場に大きな混乱を招く懸念があり、入院治療を必要とする人の医療アクセス権も脅かしかねない。また、医療保護入院における権利擁護の仕組みとして検討プロセスで切望された代弁者制度の導入は法案に規定されることなく見送られている。本法案におけるこれらの点は、非自発的入院をさせられる方の権利擁護の観点から看過できないものであり、大変遺憾である。 一方、精神科病院の管理者に、精神保健福祉士等の退院後生活環境相談員の選任、地域援助事業者との連携に関する努力、退院および地域移行支援のための体制整備等の措置が義務づけられている。また、精神医療審査会に関しても各合議体に精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者を委員とする規定となっている。これは、本協会が要望してきた内容に沿うものであり、精神医療の良質な提供体制に関する指針を定めることとあわせて、医療保護入院者の早期退院を推進する観点から、現時点で一定の評価ができる内容となっている。これらの改正点には、多岐にわたり我々精神保健福祉士の関与が規定されており、今後、精神保健福祉士がその役割を遂行するためには、診療報酬や介護報酬、障害者総合支援法におけるマンパワー増強などの財政措置と、求められている資質向上に応える一層の研鑽が必要となる。 本協会は、法施行3年後の見直しにおいて家族等の同意要件の撤廃と代弁者制度の確立を求めるものである。さらに、度重なる改正にもかかわらず、いまだ収容主義の歴史を踏襲し、精神障害者の入院治療において保護的側面を残存している精神保健福祉法の抜本的改正を継続して求めていく。 以上 |
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