公益社団法人日本精神保健福祉士協会 認定SVR養成委員会 編集
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公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、本協会)では、人材育成の事業として 2023年度より認定精神保健福祉士更新の仕組みが刷新します(図)。その研鑽の柱として、スーパービジョン(以下、SV)は位置づけられています。本協会としては、これまでも各都道府県で認定スーパーバイザー(以下、SVR)による SV が受けられる体制整備を目指して毎年認定SVR養成研修を実施しています。従来よりSVは、個別SVも集団SVでも対面を基本とし、認定SVR養成研修会においても、対面による個別SVの実施を認定SVRの基本と位置付けて養成を行ってきました。
2023年4月現在で114名の認定SVRが登録されています。現段階で認定SVRが1人もいない県もあり、認定SVRの少ない現状では構成員のSVの機会は得られにくくSVの体制整備は喫緊の課題です。さらに多くの構成員がSVを受けられるためにグループスーパービジョン(以下、GSV)の実施も求められている状況から、認定SVR養成委員会では、これまでに認定SVRによるGSV実践のために、GSVについてのテキストや解説動画を公開するなど認定SVRの技術向上を支援してきました。新たな更新制度では、このような状況にあわせて個別のSVだけでなくGSVも活用することが計画に盛り込まれ、さらに各都道府県だけではなくブロック単位でGSVを実施する必要があると想定されています。
図 新たな更新制度 出典:研修センターだよりStart Line 85,2023.5.15,P2
本協会の2022年度事業計画では、人材育成、政策提言、組織強化の3本柱において重点的に取り組む課題を明確にしています。その人材育成の柱の中で重点的に取り組む課題として、「認定精神保健福祉士更新のしくみに、認定
SVR を積極的に活用し、都道府県協会等との連携によって各ブロックにおけるオンラインを活用した GSV の開催に向け、具体的な検討を進める。また認定SVRの人数を各都道府県に一人以上、全国で150人以上となることを目指し、都道府県協会等の協力のもと、認定精神保健福祉士への働きかけを推進する。」としていました。
そして精神保健福祉士の職務に関する知識及び技術の向上に関する事業の中で、「2)認定SVRの養成及び質の担保に関する事業ソーシャルワーカーとしての専門性を高めるために不可欠な
SV を実践できる人材として『認定 SVR』を養成する。また、デジタル教材の活用も含めた研修方法の検討、オンラインによるSVやGSVの方法論の整理等を行うとともに、都道府県協会と協力してSVの実施方策を検討する。」としています。今回のこのオンラインによるGSVの手引き作成についてはこの事業により取り組まれました。
昨今のICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の発展とオンラインビデオ会議システムツールの普及によって、そして今般のコロナ禍に伴う対面での接触制限下という事態に対応する形で、SVもICTを活用したオンライン面談の活用が急速に広がってきました。
ICTを活用することは、異なる地域で実践するSVRやスーパーバイジー(以下、SVE)が繋がり語れる場としてメリットが多く、認定 SVR が少ない現状を考えた際 に、個別のSVだけでなくGSVも活用することを計画し、さらに各都道府県だけではなくブロック単位でのGSV実施を容易とする方法であると考えられます。しかし、対面でのGSVと比較して、ICTを活用した GSVは特にコミュニケーション上や倫理面で課題があることは否めません。
そこで本協会の研修センターの認定SVR養成委員会では、さらなる構成員へSVの機会を増やす方策の一つとして、ICTを活用したオンラインでのブロック別GSVを、関東・甲信越、東海北陸ブロックの2ブロックにて試行的にオンラインでのGSVを実施することによって課題検証を行いました。
オンラインGSV試行実践に参加したSVEからは「話しやすい雰囲気だった」「メンバーとのやりとりを通して、自分自身と照らし合わせながら、自分自身が深まっていくような感覚があった」と非常に好評で「今後も継続して参加したい」と引き続きGSVの開催を求める声が多数あがりました。またSVRを担当した認定SVRからも、
「グループの動きを待ち集団力動に SVRが関与することが大事である点などをオンラインでは留意したほうが良い」など、オンラインでのGSVの実施に向けた課題なども挙げられました。
以上の試行実践より、オンラインによるGSVは、その限界はありつつも本ガイドラインWに掲げる課題に留意することによって、地域性にとらわれないというオンラインならではの可能性が広がることを確認いたしました。
上記の背景から、本手引きでは認定SVRがソーシャルワーカーとしての専門性を高めるために不可欠なSVを実践できる人材となるべく、ICTの活用も含めたこれまでのGSVの方法論の整理等を行うとともに、都道府県協会や各ブロックと協力したオンラインによるGSVの実施方法例を提示します。
本手引きは、ブロック別GSVの実施を通して認定SVRの皆様の意見を取り入れながら改定を重ねていく予定です。全国で一人でも多くの精神保健福祉士にSVの機会を提供できるよう認定SVR、都道府県支部の皆さまとともにSVの積極的な実施を目指していければ幸甚です。
2023年3月31日
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 研修センター 認定SVR養成委員会
T 目的
1 はじめに
2 オンラインによるGSVの手引き作成の背景
3 オンラインによるGSVの手引き作成の目的
U.GSVとその展開
1.GSVとは
2.GSVの流れと進め方
V.オンラインによるブロック別GSVの内容
1.ブロック別GSVの実施運営方法(2023年度版)
2.GSVモデル事業 実施報告(2022年度)
W.ICTを活用したグループスーパービジョンを行う際の課題と留意点
X.各種様式等
監修者
荒田 寛 龍谷大学(滋賀県)
執筆者一覧(★主担当)
T.目標・目的・基本方針
森山 拓也 (学)城西大学 城西国際大学(千葉県)★
廣江 仁 (社福)養和会(鳥取県)
岩尾 貴 (社福)長久福祉会 くらし・しごと応援センターはるかぜ(石川県)
U.GSVの進め方
池沢 佳之 ハートクリニック(神奈川県)★
吉岡 夏紀 (社福)共友会 やたの生活支援センター(石川県)
V.オンラインによるブロック別GSVの内容
中村 雅代 (医)成精会 刈谷病院(愛知県)★
池沢 佳之 上掲
W.オンラインによるGSV実施に関する課題と留意点
吉岡 夏紀 上掲 ★
中村 雅代 上掲
役割 | 氏名 | 所属機関/支部名(2023年3月末日現在) |
委員長 | 北森めぐみ | 順天堂大学医学部附属 順天堂越谷病院(埼玉県) |
副委員長 | 池沢 佳之 | ハートクリニック(神奈川県) |
副委員長 | 西銘 隆 | (医社)輔仁会 田崎病院(沖縄県) |
委員 | 今井 博康 | 北翔大学(北海道) |
池谷 進 | あおぞら相談室(山梨県) | |
森山 拓也 | (学)城西大学 城西国際大学(千葉県) | |
吉岡 夏紀 | (社福)共友会 やたの生活支援センター(石川県) | |
中村 雅代 | (医)成精会 刈谷病院(愛知県) | |
村上 貴栄 | (学)光華女子学園 京都光華女子大学(京都府) | |
三重野芳美 | (医社)翠会 八幡厚生病院(福岡県) | |
助言者 | 荒田 寛 | 龍谷大学(滋賀県) |
石川 到覚 | 大正大学(東京都) | |
名誉会長 | 柏木 昭 | 聖学院大学総合研究所スーパービジョンセンター(埼玉県) |
研修センター長 | 廣江 仁 | (社福)養和会(鳥取県) |
担当理事 | 岩尾 貴 | (社福)長久福祉会 くらし・しごと応援センターはるかぜ |