厚生労働省 令和3年度障害者総合福祉推進事業
私たち精神保健福祉士は、国家資格化されるはるか以前より「精神医学ソーシャルワーカー:PSW」として精神科医療機関を実践、活躍の場として精神障害者の社会的復権と国民の福祉の向上を目指して、当事者一人ひとりの「自己決定」を尊重したかかわりを展開し、生活者の視点を持ちながら彼らを取り巻く環境にも目を向け、社会資源の開拓や創出及び精神障害者の医療と保健と福祉に関する実践を重ねてきました。
2014(平成26)年4月の改正精神保健福祉法の施行改正に伴い、医療保護入院者には退院後の環境調整を行うことを任務とした「退院後生活環境相談員」が選任されることになりましたが、その役割の多くは以前から精神保健福祉士が担ってきた役割でした。医療保護入院は本人の同意を得ることなく行われる入院であることを踏まえ、それは本人の人権擁護の観点から可能な限り早期退院を図ること、また、退院支援、地域移行のための環境整備等を進めていくために地域支援者等と早期に連携し、行政機関を含む院外の機関との調整に努めることが主たる業務ですが、その選任の資格要件は、精神保健福祉士以外にも看護職員(保健師を含む)、作業療法士、社会福祉士、3年以上精神障害者及びその家族等との退院後の生活環境についての相談及び指導に関する業務に従事した経験を有する者であって、かつ、厚生労働大臣が定める研修を修了した者とあります。また、その配置の目安としては退院後生活環境相談員1人につき、概ね50人以下の医療保護入院者を担当できることになっています。本来であれば法改正施行後3年を目途として、施行後の状況や精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化を勘案しそのあり方について検討し見直すものとされていましたが、法改正から8年が経過した現在まで退院後生活環境相談員の詳細な実態調査はなく、当該制度における退院後生活環境相談員の現状や課題及び精神保健福祉士の選任に関する状況やその課題等は明らかにされていませんでした。
そのため、公益社団法人日本精神保健福祉士協会(以下、「本協会」)は、有識者と本協会構成員により検討会と調査作業部会を組織した上で、令和3年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業を受託し、退院後生活環境相談員の選任や配置状況、退院に向けた相談業務等の状況及び医療保護入院者退院支援委員会の開催等について調査することにより、退院後生活環境相談員の実態を把握し、その効果や退院に向けた取組に関する課題等を検証するための際の基礎資料を作成することを目的として、精神科病床を有する全国の病院約1,600か所を対象とした全国調査(悉皆調査)を実施することにいたしました。
具体的には、A票、B票の2つの調査票を作成し、A票は退院後生活環境相談員のうち管理者的な立場にある者からの管理者調査、B票は実際に業務を担っている退院後生活環境相談員からの相談員調査としてアンケート調査を郵送し、Webフォームにて回答を収集しました。
本調査により退院後生活環境相談員の選任状況や実際の担当者数や業務内容等の現状に鑑みた運用上での数多くの課題等が示唆されました。今後の精神保健福祉法の改正に向けても活用いただければ幸いです。
本事業の実施において中心的な役割を果たし、多忙な本務と本協会の会務がありながらも調査作業部会としてご尽力いただきました本協会権利擁護部「精神医療・権利擁護委員会」の委員の皆様をはじめ、本事業検討会の皆様や本調査にご協力いただきましたすべての方々に心より感謝申し上げます。
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 副会長 水野 拓二
理 事 尾形多佳士
印刷製本した本報告書において、一部誤りがございました。関係機関等へお送りした冊子には正誤表を同封しておりますが、改めまして下記の通りご報告させていただきます。お手数をおかけしますこと、深くお詫び申し上げます。
なお、本ページにて公開しているデータは正しいものへ差し替えております。
(誤) | 「30人未満」を適切とする割合が65.8%と3分の1に及んだ。 |
(正) | 「30人未満」を適切とする割合が65.8%と3分の2に及んだ。 |
(誤) | 地域援助事業者には市町村の実施する障害者相談支援事業者も含めること等により、 |
(正) | 地域援助事業者には障害者相談支援事業を実施する市町村も含めること等により、 |
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