機関誌「精神保健福祉」

通巻95号 Vol.44 No.3(2013年9月25日発行)


目次

巻頭言  ソーシャルワーカー実践『魂』の再生/岩尾 貢

第49回社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会/第12回日本精神保健福祉士学会学術集会

〔基調講演〕 専門職としての価値と実践内容の統合/荒田 寛
〔特別講演〕 精神保健医療福祉施策の現状と課題 精神保健福祉法改正と精神保健福祉士に求めるもの/江副 聡
〔シンポジウム1〕 ソーシャルワーク実践の進化を問う!.『魂』は受け継がれているか?
〔シンポジウム2〕 精神科医療と介護の連携.認知症の人たちの地域支援とは?

〔分科会1〕
1  地域移行支援を考える
2 医療機関における実践
3 高齢者および家族への支援
4 雇用および就労に関する支援
5 専門職の教育,養成
6 地域における多様な実践
7 権利擁護に関する課題や取り組み

〔分科会2〕
1  地域生活支援体制構築への視点や役割
2 ACT などアウトリーチ型の支援
3  児童・思春期における早期支援
4 災害支援の取り組み
5 精神保健福祉士の業務,役割,専門性
6 多様な領域や課題に関する支援
ポスターセッション

〔プレ企画〕
1 何をすることが「家族支援」になるのだろうか?〜目からウロコの家族支援ワークショップ〜
2 精神保健福祉士と相談支援〜制度改正を見据えて〜
3 成年後見制度とは……?〜権利を守るための,精神保健福祉士の役割を考える〜
4 育つ・育てる ソーシャルワーカーの成長を考える
5 権利擁護の鍵は“本人本位”〜大切にしたいかかわりの視点〜
6 見つめよう! 専門性〜初心に立ち返って思うこと〜

〔記念講演〕 司法の観点からソーシャルワーカーに期待すること〜人と人とのかかわりのあり方と社会で生きること〜/甲斐中辰夫

投稿規定


巻頭言

ソーシャルワーカー実践『魂』の再生

第49回社団法人日本精神保健福祉士協会全国大会/第12回日本精神保健福祉士学会学術集会 全国大会・学術集会長 岩尾  貢

 第49 回全国大会・第12 回学会学術集会を無事終えることができました.1,256 名の参加者があり,参加いただきました人をはじめ,県内関係機関の皆様,そして,ボランティア,石川県精神保健福祉士会の皆様に心から感謝申し上げます.今大会は,精神医学ソーシャルワーカーが協会組織化されて以降の半世紀を振り返り,当事者の「自己決定」,「自立支援へのかかわり」,「地域社会における精神障がい者の復権」という私たちの精神科ソーシャルワーク実践の『魂』について再考し,精神保健福祉士のあるべき姿として,誰のために何を重視する専門職かを問い直し,真摯に議論を重ねることができた機会であったと感じています.また,ソーシャルワーカーの価値と専門性とともに,人間性のありようについても深く考えさせられる機会でもありました.さらに,今大会の特徴は基調講演から記念講演,シンポジウムと一貫してソーシャルワーカーとしてのありようを問うたことでした.当事者の側に立つという,ごく当たり前の実践理念が資格化後,周囲の要請に応えることを重視し,ソーシャルワーカーとしての主体性を喪失したパターナリズムやマニュアルに頼った実践に陥っているのではないかという反省が求められたと言って良いでしょう.私たちは多くのジレンマを経験します.「クライエントのニーズの中で創造していく,形にしていく厳しさが私たちの実践にはある」(門田)という指摘は,だからこそ制度を超えて実践することの重要さがPSW に求められ,「PSW の本来のありようをもう一度,自ら点検していこう」(荒田)という方向性が示されたことには意義深いものがあります.

 大会を通したさまざまな出会いを大切にしていただきながら,PSW 1人ひとりが,当事者とのかかわりのなかで,自らのなかにあるソーシャルワーク実践『魂』を自覚し,育み,こだわりながら,当事者1人ひとりの自己実現に向けて,当事者とともに取り組み続けること,PSW 実践の「深化」と「進化」に向けて,果敢にチャレンジすることを期待したいと思います.


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